就活の結果とはるちゃんへ告白
「手汗で一番困るのがさ、すぐ握手求める人。ちょっと意見が合っただけですぐ握手求めてきてさ」
「あ〜分かる分かる。断る訳にもいかないしね。汗で濡れるよ、知らないわよって」
はるちゃんと2回目のごはん。お互いに手汗の悩みを打ち明けて、楽しくおしゃべりしている。完全に彼女を好きになっていたが、はるちゃんがどう思っているのかが分からない。はるちゃんと付き合いたい! 彼女となら手汗を気にしないで恋愛できる。でも嫌われてもう会えなくなってたら最悪。でも会ってくれるということは、脈ありじゃないのか? 頭がぐるぐる周り、胸がギュッと苦しくなる。
結局勇気が出ずに告白できなかった。就職も恋愛も宙ぶらりんで苦しい。一体この後どうなるんだろう? 早く楽になりたい。
運命の面接結果の発表日がきた。郵便受けをのぞいてみると、面接を受けた会社からの封筒が。封を開ける手に汗がにじむ。中の手紙を見ると「合格」の文字。マジで? よくあのひどい面接で受かったな。受けた人全員受かったんじゃないの? とりあえず就職は決まった。あとカタをつけなくてはならないのは、はるちゃんへの愛の告白だ。
今日もはるちゃんは抜群にかわいい。温かい太陽の光に、ショートカットがなびいてる。
「今日こそ告白しなければ」
そう思うほど焦りで顔がひきつっていく。カフェでも会話が続かず沈黙が流れる。やばい、つまらない男と思われる。場所を変えようと店を出ると、あっという間に日が暮れていた。そろそろ帰ろうか? とはるちゃん。いや、ここで帰ったら次はない。勝負するしかない。覚悟をきめて夜の公園に向かう。ベンチに二人きりで座り、ペットボトルのお茶を飲む。今だ、告白するしかない。
「あのさ……」
そう言ったきり、次の言葉が出てこない。風が何度もほほを通り過ぎる。もう言うしかない。グッと拳を握る。
「俺さあ、はるちゃんのこと……、好きなんだよね」
声が震えて恥ずかしい。はるちゃんは真剣な顔をしているが、返事はない。長い長い沈黙が続く。しばらくして彼女が口を開いた。
「しんちゃんの勝ちだよ」
勝ち?
「しんちゃんが私を好きなのは気付いてたよ。でもあたしはそう思えなくて。初めはなんとも思ってなかったけど、何度か会って、私も好きになって。だからしんちゃんの勝ち」
「それは……、付き合ってくれるっていうこと?」
「うん」
そういうとはるちゃんは頭を肩にもたれてきた。やったーーー!!! ついに人生初の彼女ができたぞーーー!!! 叫びたい気持ちをぐっとこらえて、はるちゃんを抱きしめた。
あっという間に春がきて、大学を卒業した。単位ギリギリでの卒業。大学で学んだことはとくに無かった。お金を出してくれたお父さんお母さん、本当にごめんなさい。そして一生できないと思っていた彼女もできた。手汗がひどくたって、恋愛はできる! ……お互い手汗持ちだけど。
彼女が出来て心配していたことがある。それはエッチの最中に手汗が出て気持ち悪がられないか、ということ。でも初体験を終えた今、それは杞憂だった。だって部屋は暗くてよく見えないし、お互い興奮しているから手汗がどうとか気にしてるヒマはないからだ。
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