はるちゃん(天使)と会う
白いワンピースがまぶしい。はるちゃんはまさに地上に現れた天使といった感じで、僕の心は釘づけになった。緊張とうれしさで手汗の量はマックスに到達したが、はるちゃんも同じく手汗をかくので心配はいらない。手汗を気にしないでいいって、なんて楽なんだろう! 青空に向かって叫びたいくらい。
「はるちゃんて何の仕事してるの?」
「花屋で働いてるよ。接客とか花束つくったりとか」
「え~っ、すごいね。でも花束つくるときに手汗気にならないの?」
「エプロンにいつもタオル入れてるから」
そう言ってはるちゃんは笑った。彼女は手汗をかくというのに、花屋さんで接客の仕事をしている。手汗の天敵といえるレジ打ちもやっている。僕よりずっと前向きで明るくて、そんな所も好きになった。
「また会おうね」
そう言ってはるちゃんと別れた。
「本にカバーはお付けしますか?」
答えはもちろんイエス。カバーを付けないと本の表紙が手汗でふやけてボロボロになってしまう。読み終わる頃には、そのカバーも汗でやぶけてしまうんだけど。本屋を出て大学に向かう電車にのりこむ。
ふう、今日は混んでるな。ダイヤ乱れかな? 座れないからつり革をつかもうと思ったが、この混み用だとすぐに押し出されて他の人がつり革をつかむはず。手汗べったりのつり革を他人に握られるほど嫌なことはない。仕方なくつり革ではなく、荷物置きの銀の棒をつかむ。電車でも気を使わなければならないなんて。
「おい朝田、就職は決まったのか?」
大学の廊下で振り返ると先生がいる。やべっ、もうそんな時期? あわてて校内に貼りだされている求人票を見る。どの仕事もピンと来なかったが、その中でゆいいつ知っているパチンコ屋の求人が出ていたので、何も考えずにそこを受けることにした。
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