手汗(手掌多汗症)オフ会その後 はるちゃん

「>しんちゃん

 さわやかBOYめ、いつか化けの皮をはいでやるぜ~」

 オフ会の興奮がさめないまま朝をむかえ、掲示板をのぞきこむ。早くもオフ会の感想が書き込まれている。みんな寝てないの? エリンギは掲示板でも相変わらずの絡みっぷり。掲示板には幹事への感謝、盛り上がった話の続き、シリアスな話もしっかり押さえてあって、オフ会参加者が何を感じていたかが分かって面白い。オフ会後の掲示板のやりとりこそが、オフ会の醍醐味なのだと知る。

 僕個人あてに書き込みもある。そんな中で目を引くのが、はるちゃんのものだ。

「★しんちゃん

 カラオケ上手だね! 聞きほれたわ~♪」

 胸の奥が熱くなった。はるちゃんは正直かわいいと思っていた子だ。丸顔の童顔で目がぱっちり、はっきり言ってタイプ。そんなはるちゃんが、ほめてくれたのだ。すぐに返事を書こう。「カラオケほめてもらえて嬉しいです♪ はるちゃんと話ができてよかったです!」と眠い目をこすりながら、速攻で掲示板に投稿した。


 もんもんとしてきた。はるちゃんと掲示板でのやりとりは続いているが、もっと仲良くなりたい。みんながみてる掲示板じゃなくて、個人的に仲良くなりたい。はっきり言って下心満載だ。アプローチする方法があることは前から気づいていた。はるちゃんはメールアドレスを掲示板にのせていたので、そこにメールを送ればいい。でもいきなりメールして気持ち悪がられたらどうしよう。文面は作るがなかなか送れない。ドキドキしてマウスは汗まみれになっていった。


「あーはるちゃんと仲良くなりたい」

 オフ会から日が経つに連れ、掲示板でのやりとりも次第になくなってきた。このままフェードアウトするのは嫌だ。勇気と汗をふりしぼり、はるちゃんにメールしようと、考え抜いた文面を送った。

「はるちゃん久しぶり。元気してる?」

 シンプルイズベストな文面。これで返事が無いならあきらめよう。メールをして5分たったが返事がない。30分たっても1時間たっても返事はない。通知センターに何度も問い合わせるが、メールは届いていない。やはり気持ち悪がられてしまったのだろうか? はあ、がっくり。

 はるちゃんからの返事はなく、一週間が過ぎた。世の中すべてが嫌になってきたその時、ケータイにメールが届いた。

「久しぶり~。私は元気だよ。しんちゃんは?」

 元気元気~! 思わず一人でガッツポーズした。嫌われてはいないようだ。はるちゃんの負担にならないよう、明るめのテンションでメールを続ける。

 メールを続けていると、また悶々としてきた。はるちゃんと会いたい。もっと仲良くなりたい。気持ちを抑えることができず、思い切って食事に誘うメールを送った。やせるくらい緊張して返事を待っていると、結果はまさかのOK。明日二人で会うことになった。やっべー、緊張して手汗がドバドバ出てきた。

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