第12話「告白すること」

「でわでわ?

ここはシャルラ様に倣って我々も衝撃の告白タイムとまいりましょう!!」


シャルラが落ち着いて元の席に戻り、スプリスが慰め、私が冷たい視線を浴びているころ。

コタロウが助け舟のようにそんな話を振ってきた。


『は?

何言ってんの真っ黒くろ助、あんまりシャルラを馬鹿にすると炭にするわよ』


「…ふええ…」


『ああよしよし…まじで炭にするぞ』


「うわあ、まじでやれるからせっしゃどきどき!

でもでも、こういうのって楽しくなりませぬか?」


コタロウなりに今の空気を変えようと気を使っているようだ。


「わしは今さっき結構な告白をしたのだが?

それは数に入るのか」


少し興味があるのかガヴリノールが話に入ってきた。


「うーむたしかに…あれは主殿や皆様も結構驚かれてましたからなぁ。

じゃあガヴリノール殿はもう良しということで…」


『でもガヴリノール最近かつらかったじゃん、その話は?』


「いやいやちょっと待て似非神族」


『誰が似非神族だこらあ!』


「お前本当にふざけるなよ」


『べっつにーふざけてないもん風のうわさで聞いたんだもーん』


「ガヴリノール…」


私が心配の声を上げると、ガヴリノールがフルフルと震えてうつむいている。


「…孫がな…デルカが…「おじいちゃん、頭がピンク色なんだね」っていったのだ…」


「…どういうごどだ?」


「…グロッズ殿、人間は毛髪が抜けると頭皮が露出を…」


「アレク」


「すいません」


あれほど落ち込んでいたシャルラまで憐みの目をガヴリノールに向けている。


「ガヴリノール…あなたの老いはもうそこまで…」


「シャルラ!

言うな!

…それ以上言わんでくれ」


一瞬で気温が氷点下にまで急降下する。

あのコタロウですらおろおろとする事態だ。


「で、では次は拙者が!」


「お、おお!

コタロウか!

でっかいのをぶちかましてくれよな!」


リドルゲンが合いの手をいれ、空気は一度常温に戻った。


「あれは…あれは、最終決戦前夜でござった…」



某はその日、どうしても寝付けず。

皆様のテントのそばに立っていた木の上で気を高めていたのでござる。



「…ああ!

あったあった!思いだした!

そういえばあったなぁあの古戦場で!」


リドルゲンが盛り上げるために相槌を打つ。



月の光が本当にきれいでしてなあ。

某はあの月の光をよく覚えてござるよ。

しばし月に見とれていたとき、拙者は強烈な力を感じて下に目線を移し申した。

するとなんてことはない、皆様の寝泊まりするテントがあるのみでございます。

きのせいか?

と思ったのですが、次の瞬間拙者はその力の源を見つけもうした。



『…ん?』



それはまた強大な力を持っておりましてな。

ロープに括り付けられ風にたなびくそれに拙者は思わず手を伸ばし、月の光にかざして眺めたのです。



『…』


「それを拙者は大事に懐にしまい込み、この地の思い出として故郷に持ち帰ったのですが。

それを今日お持ちしました次第でございます!」


『…んん?』


コタロウは懐に手を突っ込むと黒い布地のそれを少しづつ取り出して…。



『『お前それ私のパンツじゃねえかッ!!』』



次の瞬間、スプリスの右手から発生した黒い光球がコタロウの顔面に直撃した。


「アベシッ!」


コタロウは糸の切れた人形のごとく吹き飛び、それをアレクが窓に突っ込む前に受け止めた。

私が窓が割れずに済んでほっとしていると。


『こんの黒スケベ爺がふざけやがって!!

お前に魔王討伐にノーパンで挑んだ私の気持ちが分かるのか!!』


スプリスは次なる光弾を右手に発現させ、目を赤く光らせて臨戦態勢に入っている。


「え!

スプリスあなたあの時ノーパンだったの!?」


シャルラが意外そうな声を上げる。


「まじか…犯人扱いされた俺が受けたあの袋叩きはいったい…」


リドルゲンが絶望の表情で手をわなわな震わせている。


「そういえば結局見つからずじまいだったな、それはさがしても見つからんわけだ」


ガヴリノールがうんうんと頷く。


「おいコタロウお前…ッ!

あの時セーラ嬢が止めてくれなかったら俺マジでお嬢に殺されてたんだぞォ!!」


リドルゲンが黒煙を立てているコタロウの胸ぐらをつかんでゆすっている。

スプリスは荒く息を吐き、それをシャルラがたしなめている。

するとコタロウはまだ息があるのかゆっくりと黒い布地の下着を持ち上げる。


「…こ、これをお返ししようとおもい…。

いまこうして…この場で…ござ」


『いるか!死ね!』


コタロウの顔面に二発目の光球が直撃し、家の外にまで紫の光が放たれた。

コタロウの手から黒焦げの下着が崩れ落ち、同時に腕もパタリと地に落ちる。

悔いなしとばかりににこやかな表情でコタロウはがくりと首を垂れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る