番外編 まっしろなおばけ
「かばんさん、サーバルさん、そろそろ夕飯にしようかと思うのですがどうでしょう。」
ロッジのみはらしでうつらうつらしていた僕たちをアリツさんが呼びに来てくれたみたいだった。
「サーバルちゃん、起きて。一緒に夕飯を食べに行こう?」
「ふぁーい。」
まだ少し眠そうなサーバルちゃんと二人でロビーに行くとオオカミさんにキリンさん、それからアリツカゲラさんが席についていた。
「みんな集まったね。じゃぁこの時期にぴったりなお話をしようか。
まっしろなおばけの話だよ。」
「まっしろなおばけ?ですか」
「あぁそうさ。
そのおばけはとってもおいしいから、ヒトやフレンズの大好物だったらしいんだ。だけどね、おばけも食べられたくはないからヒトやフレンズに襲い掛かるんだ。」
「おっ襲われちゃうんですか。」
「ヒトやフレンズを襲うなんてセルリアンでしょうか。」
アリツさんが首をかしげた。
「大丈夫だよ、かばんちゃん。もし襲ってきても自慢の爪でやっつけちゃうよ!」
「サーバルちゃん、ありがとう。」
「それはどうかな、サーバルにかばん。」
「えっ?」
「どうして?」
「そのおばけはね、食べられるときにヒトやフレンズを襲うんだ。」
「えっ?」
「事件だわ……。」
「どういうこと?よくわからないよ、オオカミ。」
「そのおばけはね、噛もうとしたり飲み込もうとしたりすると嫌がってあばれるらしいよ。運が悪いとのどに詰まってそのまま……。」
「こわい、こわい、こわい、こわい。」
「それでもおいしいからと毎年たくさんのヒトが、フレンズがおばけを食べようとしてのどを詰まらせていたらしいよ。」
「そんなことが繰り返されるなんて絶対におかしいわ!事件よ!」
「たしかにそうですね、キリンさん。
どうしてそのままにしておいたんでしょう?」
「どうも、対策をしようにも美味しくなくなってしまうから手が打てなかったらしいよ?」
「おいしいから食べたいのにまずくなってしまっては本末転倒ですものね。」
「その通りだよ、アリツさん。
ほら、そこにあるジャパリまんの中にも白いおばけが今か今かとみんなを待ち構えて……。」
「こわい、こわい、こわい!」
「冗談、冗談だよ。白いお化けの話は本当のことだけれど、ジャパリまんに隠れていたかはわからないんだ。
あれ、ボスどうしたんだい?」
白色に紅色の『の』のマークの入ったジャパリまんの入ったかごを持ったボスがやってきた。
「みんな、今届いたおもちいりジャパリまんには気を付けてね。」
唐突にかばんの腕のラッキービーストがそういった。
「ラッキーさん、おもちって何ですか?」
「餅は蒸したもち米をついて作った料理で一般に白色が多いよ。もちもちとした食感とお米の甘みが楽しめるおいしい料理だけれど、とても嚙み切りにくいから少しずつゆっくりと食べてね。ごくまれにのどに詰まらせてしまうヒトやフレンズもいるよ。」
「オオカミさんが言っていた白いお化けってそのおもちのことみたいですね。」
「どうもそうみたいだね。でもまさかジャパリまんのなかにもいるなんて。」
「わたし、気になるな~おもちっておいしいんでしょ?食べてみたい、わたし、たべてみたい!」
「サーバル、ゆっくり食べてね。」
「何回も言わなくてもわかったよ、ボス。」
「じゃぁ、いただきます!」
サーバルちゃんは白いジャパリまんを手に取って少しにおいをかいでからハムっと大きくかみついた。
「なんかのびるよ~。こんなの初めておっもしろーい。」
「つきたてだからね。つきたてのおもちはやわらかくてよく伸びるんだ。みんなも冷めないうちに食べてね。」
「そういうことなら私も食べてみようかな?」
「僕もいただきます。」
「先生が食べるなら私も!」
「まだあるのなら私もいただきますね。ロッジの新しいメニューになるかもしれませんし。」
「じゃぁ、みんなで改めて、いただきます!!」
「む~っむ~~~~っ!!」
「おっオオカミさんっ!?」
「先生っ!?」
「あはは、冗談だよ。」
「もう、食べ物でふざけちゃだめですよ。」
「ごめんごめん。ついやりたくなってしまってね。」
「ほんとうに詰まらせても助けてあげませんよ?」
「アリツさんはそんな酷いことしないって信じてるからね。」
「もう、こういうときだけ調子がいいんですから。」
アリツさんかそう言った瞬間にロビーのドアが開き博士と助手が現れた。
「我々に黙って新しい料理を食べるなどいい度胸なのです。」
「我々にも食べさせるのです!」
Fin
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