第9話 ほうしゅう
「さぁ今日もよろしく頼むよ。」
「任せるのです。」
「我々は賢いので。」
「あぁ。」
「今回のターゲットはこの写真のフレンズだよ。」
こうして私たちのフレンズハンターとしての生活が本格的に始まったんだ。
狩りが終わったらまたいつものように研究所に呼ばれたよ。
特別な料理を振る舞うとね。
とてもそんな気分ではなかったんだけど博士と助手に無理矢理引きずられたんだ。
「いただきます、なのです。」
「・・・・・・。」
「オオカミ、食べないのですか。」
博士たちはさも当然とばかりに特別な料理へとてを伸ばしていた。
「これは我々への正当な報酬なのですよ。」
「御褒美なのですよ。」
「きちんと食べて鋭気を養うのです。
食べないのなら我々が頂くのですよ?」
「わかった。
これは私が食べる。私のぶんだから。」
肉を使ったシチューはなんとも言えない旨味があって・・・・・・なかに入っている肉は、自分が狩った獲物は、蕩けるような旨さだった。
「美味しい、美味しいよぉ。」
「そう、それでいいのです。」
「美味しいものを食べてこその人生なのです。」
涙をボロボロ流しながら料理を食べたのはあとにも先にもあのときだけだったと思う。
旨味の滲み出したスープにパンを浸して食べる。無駄なく食べきることは犠牲になったフレンズへのせめてもの償いだった。
「ごちそうさまでした。」
心を込めた初めてのごちそうさまだった。
でも慣れというものは恐ろしいものだね。初めはあれほど抵抗のあったのに一ヶ月もすれば美味しいご飯が食べられるぐらいにしか思わなくなってしまうのだから。
本当に怖いと思うよ。
それからというもの私も博士たちも、新たに加わった仲間もみんなハンティングに勤しんだんだ。なにせ世界中から続々とフレンズが送られてきていたからね。いくら狩ってもすぐに次が補充されるのだから。
相変わらずジャパリまんの供給は追い付かないし、全くひどい有り様だったんだ。フレンズを狩って食べることは口べらしになるだけでなく、私たちがフレンズを食べればその分ジャパリまんの消費量も減らせるからね。
とても都合がよかったんだよ。
えっ、どうやってたくさんのフレンズをもとの動物にもどしていたのかって?
さすがは、かばん。いいところに気がついたね。もちろん教えてあげるよ。
私たちフレンズハンターがターゲットのフレンズを眠らせる、ここまでは話したよね。
そのあと眠らされたフレンズは特別な仕掛けのある部屋、通称例の部屋に送られるんだ。この部屋はね、厳重に管理がしかれていて一度入れば中かなの脱出はまずできない。
部屋の出入りや機能を使うためにはコントロールルームでの操作が必要だからね。
そしてこの部屋には特別な仕掛け・・・・・・セルリアンを出したり消したりする仕掛けがあるのさ。なに簡単な仕掛けだよ。部屋の上に2種類のタンクがあってね、片方にはハンターに研究用として捕まえてもらったセルリアンが詰めてあるんだ。
そしてもう片方には海水が入っていてスプリンクラーに繋がっているんだ。
もうわかっただろう、かばん?
例の部屋というのはターゲットのフレンズがそのフレンズとしての一生に幕を下ろす部屋なのさ。
そしてそのままフレンズだったものは次の部屋へと運ばれる。
意識のないうちに始末をしてあげないと可哀想だからね。大急ぎで逆さまに釣って首にある頸動脈という太い血管を切るんだ。
すると滝のように血が溢れてね、その動物は絶命するのさ。あぁもちろんかかったりしたら臭いも汚れも落ちないから注意がいるよ?
そしてそのあとは皮や内蔵を取り払っていくわけだね。
こうしてフレンズだったものはお肉へと変わるのさ。
どうしたんだい、かばん。
そんな気分の悪そうにして。
これは君たちヒトやヒトのフレンズが何千年も、いや何万年も続けてきた食肉文化なんだよ。
生きるため、食べるために他の生き物の命を奪う。
仲間と共に狩りをして獲物を食らう。
当たり前のことじゃないか。
でもね、そんな日々は唐突に終わりを告げたんだ。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます