第8話 おいわい

「いやぁ焦りましたよ全く。せっかく用意したデザートが無駄になるかと思いました。」


「デザートですか?」


「久々の甘味なのです。」


博士と助手は嬉しそうであったが私は全く気分が晴れなかった。


「カイト、すまないがそういう気分では・・・・・・。」


「いえいえ、フレンズハンターの結成祝いです。しっかりと祝わないと。


本部から言われていたのですよ、博士と助手以外のフレンズの勧誘に成功したら正式に組織として認め予算をつけると。これでようやく私もタダ働きから解放されます。あっお三方にももっといろいろーー料理とか道具とかお渡しできるようになりますよ。」


「人は話が長いのです。」


「要するに目出度い席にふさわしいお菓子を用意したのですね?はやくもってくるのです。」


「食べさせるのです。」


「わかりましたからそんなに急かさないでくださいよ。今持ってきますから。」


そういってカイトが厨房から持ってきたのはとってのついた大きな箱だった。


「ほぅ。」


「これはなんとも。」


はこの中から現れたのは純白の大地にこんもりと積った雪。そして真冬の寒さにめげず咲く椿のような真っ赤な果実。


何より目をひいたのはオオカミ、ハカセ、ジョシユ、おめでとう!という文字だった。


「折角なので写真を撮りましょうかね。」






「そのときカイトがカメラマンとなってとった写真がこれさ。


あぁ私とカイトが写っている写真もあるよ。」


一枚目の写真はみんな驚いたような顔をしていた。

そして二枚目のオオカミさんはちょっと困ったようなそれでも嬉しそうな表情だった。


「これがカイトさん・・・・・・。」


すこし目付きは鋭かったけどとてもそんな酷いことをするヒトには見えなかった。


それにハンターの皆のためにこうしてケーキを用意したり料理を作ったり・・・・・・笑顔を見せた写真からも本当はフレンズ思いのヒトなのかもしれないなとも思った。でもそんなヒトがどうしてフレンズにフレンズを殺させるなんてことを指揮していたのか・・・・・・僕には理解できなかった。


「これは私にとって大切な思い出、宝物なんだ。」


オオカミさんはすこし色褪せた写真を大事そうにチャックつきビニール袋へ入れ、懐へしまうとそう言った。


「さて続きをはなそうかな。」





「いただきます、なのです。」


「いただきます。」


博士たちは早速フォークでケーキをつつき始めた。


「これは。」


「なんとも。」


あの口うるさい博士と助手がケーキを口にいれたとたん、あまりの美味しさにか恍惚としだまっていたんだ。





「あんな表情を見せられてはたまらないよ。私も結局はケーキに手を伸ばしたんだ。


なんだかんだ言って私も動物、本能には逆らえないんだよね。結局博士たちに混ざってその特別なお菓子、ケーキをつついたんだよ。


あの味は今でも忘れないよ。暴力的なまでに脳を刺激する甘さ。雲を食べるかのようにふわふわのクリーム。そして赤い果実は酸味でギュット引き締めてくれる。


直前までの暗い雰囲気も忘れて尻尾を振っていたと思うよ?」






「ごちそうさま、」


「あぁ、ごちそうさま。


にしてもこの量のケーキを食べきるとは恐れ入ったよ。」


「甘いものは別腹なのです。」


「なのです。」


「全く博士と助手はどこでそんな言葉を覚えたんだか。」


「美味しかったよ、カイト。ありがとう。」


「喜んでもらえて良かったよ。

来週からよろしくね。」



つづく




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