第4話 にっき

「さて、一体どこから話そうか。さすがの私もすべてを知っているわけではないしね。まぁ君に分かりやすいように時系列に従ってはなそうか。」



「はい。」



「これはね、昔ジャパリパークが動物園として営業していたときにいたパークスタッフの日記に書いてあったお話さ。どこまでが本当のことかいまいちわからないのだけど少なくとも私は事実が書いてあると思っているよ。」



これは私の個人的な日記帳だ。もし何かの拍子でこれを手にしたヒト、あぁフレンズかもしれないが、どうか我々人類の過ちを知ってほしい。別に許してくれとは言わないが、君たちが同じ轍を踏まないことを切に祈っている。





4月1日


エイプリルフールだが冗談にしてもたちの悪いことが起きた。


サンドスター火山が突如大噴火を起こし世界的に大気中のサンドスター濃度が急上昇。パーク内にも巨大セルリアン含め大小様々なセルリアンが発生した。某国が危惧した事態そのものが起きてしまったのである。 某国は自国の生命と財産保護の観点から独断でサンドスター火山への空爆と土砂の投下による火口の閉鎖を実施しようとしたらしい。


飛んできた爆撃機が撃墜されたという情報もあるが依然状況ははっきりしない。




4月2日


米軍は何てことをしてくれたんだ!


サンドスター火山は見事にえぐれ火口からはサンドスターに混じって黒いものまで吹き上げられている。なにかよくないことが起こらないといいのだが・・・・・・。


研究員はサンドスターρの濃度が上がり始めているといっていたがなんのことだかよくわからない。




4月5日


この数日は間違えなく人類にとって最悪の日々だろう。米軍の無謀な作戦のせいで世界中の活火山から、セルリアンを生み出すサンドスターρが吹き出すようになったらしい。

各国が軍の出動と緊急事態宣言を始めた。


パークではセルリアンが大量発生し対応に追われている。

有効な攻撃手段が見つかればいいのだが。




4月⭕️日


アメリカ軍の無謀な作戦のために起きた俗に言う例の異変以後、世界的に人形動物、通称フレンズの大量発生が起こった。さらにまるで呼応するかのように世界中で不定形未確認生物、いわゆるセルリアンの大量発生が起きた。


この頃にはパークと日本政府がひた隠しにしていたサンドスターによる人間のフレンズ化のリスクやセルリアンが人類を襲うということも広く知られるようになっていた。


そんななかでのサンドスター・サンドスターρの大量放出とセルリアンの世界的発生である。混乱にならない訳がなかった。



6月⭕️日


人類は決して少なくはない犠牲のもとセルリアンの排除に成功し、その脅威を退けた。 しかしその代償は人類の1/4のフレンズ化とほぼすべての脊椎動物のフレンズ化という決して安いものではなかった。


さらに軍事力の行使による環境破壊も深刻であった。未知の生物であるセルリアンの排除に際し焼夷弾、化学兵器、あまつさえ核兵器までもが投入された。後にセルリアンに対して最も有効な攻撃が海水の棒状注水であると判明したが既に時遅しと言った状況で、各地域の第一次産業は壊滅的被害を受けていた。


たが本当の悪夢はこれからだった。

ヒトが生き残りをかけてフレンズを排除しようとしたのだ。



6月10日


世界中からフレンズ化した動物が送られてくる。はじめは研究用かと思っていたがどうにも違うらしい。なんでもフレンズ化した動物はジャパリパークに移送することになったらしい。



6月⭕️日


隔離政策もいい加減にしてほしい。もうパークの定数はとうの昔に超えて居るらしい。今はまだかろうじて運営できているが遠からずどうしようもなくなるなんて研究員が話しているのが聞こえた。せっかくセルリアン騒動が終息してきているのにこれではパークの再開どころではないだろう。



6月20日


唐突にジャパリパークの運営委員会が開かれた。パーク設立以来幾度となく開かれたこの委員会だが、万年窓際属の私が呼ばれたのははじめてだった。一体どんな有益な会議なのかと思いふたを開けてみれば、それはフレンズの口減らしがうまく行かないという報告会だった。


既に施設の収容力を大きく越える数のフレンズがジャパリパークへ移送されておりその数はとどまるところを知らない。

港での殺処分も追い付かずパークのフレンズ数は増え続けているなんて聞きたくもない報告だった。最近港付近一帯が立ち入り禁止になったのはこのせいらしい。


そして既にパーク内に放たれたフレンズの口減らしを行おうとハンターなるものが組織されるも戦果は思わしくないらしかった。どうやってフレンズの数を調整すべきか・・・・・・。


フレンズを以てフレンズを制す、それしかないだろう。


若手研究員の発言に会議室は水を打ったように静まり返った。


我々の力だけではフレンズの数を減らすのは不可能です。ジャパリまんの供給も追い付かない今の状況ではやむを得ません。


「しかしどうやってフレンズを協力させるんだ?彼らは同族を狩ることに抵抗感をしめすし、いくら賢いとはいえ説得できるとはおもえん。」


手はあります。彼らはやがて自主的に協力せざる終えなくなることでしょう。


どこからそんな自信がくるのだろうかと思ったが彼のいう手法は確かに理にかなったものだった。


その提案とは・・・・・・。


この提案はあまりに非人道的であるとのそしりを受けたが、世界中からフレンズが送られてくるパークの状況は一刻を争う状況にあり・・・・・・そして全世界へ現状の打開策を示すという意味でもこの案が採用されることとなった。


きっと後世の人々はこの決断をした我々を蔑むことだろう。これだけの策を弄することのできる賢い人類は、愚かさと奢りからその知恵の使い方を誤ったのだと。



「ここまでのことは私もこの日記を読むことでようやく知ったんだ。まったく人というのは恐ろしい生き物だよね。こんな風にフレンズの命に優先順位をつけて居たのだから。」


「うっ・・・・・・。」


「かばん、このぐらいで驚いてもらっては困るよ。ヒトのフレンズとして彼らがやったことは知っておかないといけないからね。


さぁ続きを話そうか。ここからは私が実際に体験したことだよ。」




つづく

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