第27話 気付き

その日を僕はなんとか無事に生き終える。

課題を進めて、帰ってきた父さん母さんのために家事をして。

夕方にマミから明日の集合場所について、電話を受け取って。


中でも難関は、あんなことを外でしておきながら、顔色一つ変えない父さんの横を通る時だった。絡みつく二人を思い出しながら、真面目一辺倒みたいな顔をする父さんの面を見て、吐き気を催す。

そんな自分を感じて、ああ僕は心の中ではまだ父さんに期待していたんだ。あれは、幼き頃の幻覚ではないかとそう思っていたんだ、ということを自覚する。

実際僕はあの一件を見るまでは、母さんはともかく、父さんのことは結構尊敬していた。自分たちのためにお金を稼いできてくれるし、僕が何かしたら褒めてくれることもあった。父さんだって、今日の日までに少しずつ変わっていている。僕にとっては悪いほうに。

狂ったように僕にいろいろ押し付ける母さんに疲れてしまったのかもしれない。

だからマミに逃げたのかも。


人の心情としては理解できる。

でも——子供としては。

そんなことを考えて寝返りを打った。

少し遠くで寝息を立てて寝ている”僕”が目に入る。

呑気そうに寝ている彼に小さくため息をついて、再び布団を深くかぶろうとするが、そこである可能性に気付く。


いや、待て。

異世界転移や転生が実際にあることを、僕は知った。

じゃあ、彼らが最初から彼らのままだとどうして証明できよう。

異世界にうつるパターンとして、もともとその世界にいた人間の体に魂だけが入る、というものがあるのを読んだことがある。

もし、そうならば、

僕の家族は、マミは、本来、もっとましだった可能性があるのではないか?

それが本当ならば僕が恨むべきは、転生ゲームなんてものをこの世界で実施している神なのではないか。

そうだ、母さんだって年々状態が悪化してきている。それも、ゲームの条件のため。

神の奴のせいに決まってる。


あの三人の条件が何なのかは知らない。

でも、僕にとって都合のいいものではないに決まっている。

僕にとってそもそも三人ともが、害してくる立場の人間なのだから。


暴いてやる。


僕は思考を巡らす。

僕の平穏を打ち砕いた神をどうしたら出し抜けるか。

僕らの真実の世界をどうしたら取り戻せるか。


すべて神の策略。

ゲームのせいだ。

そう思うと少しだけ、明日のデートに対する恐怖心が薄まるのだった。

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