第50話切れた糸
チュンチュン
「あ…もう朝か…」
気がつくと朝日が照らしていた
昨日あの後私は秘密基地を出て自宅に帰った
自分の部屋に上がり昨日の事をずっと考えていた
連絡しようとしたけどどうやって話せば良いか分からずそのまま放置したままだった
「あ…身体ベトベトだ…シャワー浴びなきゃ」
私はシャワーに向かった
流された身体が昨日の事を忘れてくれるような気がした
だけど唇には昨日秀兄ちゃんからキスをされた感覚がまだ残っている
(私…昨日キスしたんだ…)
秀兄ちゃんが私をそんな風にみてるなんて思ってもいなかった
秀兄ちゃんにとって私は本当のお兄さんにしか見えなくて…それ以上の感情なんてなかった
でも秀兄ちゃんは違った
私はシャワーから上がり用意を済ませリビングに向かった
キッチンではお母さんが朝食を作っていた
お母さんが私に気づいた
「あら、円花起きてたのね、昨日大丈夫だった?
明子さんから聞いたんだけど体調悪くて帰ったんだって?もう大丈夫?」
(あ…そうゆう事になってるんだ…)
「あ、うんありがとうもう大丈夫…」
「そう?最近疲れてるんじゃない?しんどいなら休んでも大丈夫よ?」
昨日の事話したいけど今は心配かけたくない…
「ありがとう、けど大丈夫」
「そう?お腹空いたでしょ?朝食用意したから食べなさい」
お母さんはそう言って机に私の朝食を置いた
「ありがとう、頂きます」
私は朝食を食べた
「ごちそうさまでした、行ってきます」
そのまま大学に向かった
ダメだ…歩くたびに晋ちゃんの事を思い出す
私の頭の中は昨日の事ばっかり思い出す
早く忘れたいのに…
しばらくして大学に着いた
私は重い足取りでゼミに向かった
「ハア…」
ゼミの部屋の中はまだ誰もいなかった
私は席に座った
机に顔を伏せた
また…涙が溢れてきた
泣きたくなんかないのに…
その時同じゼミの女の子に声を掛けられた
「あ、三田倉さん!さっき須藤先輩が探してたよ?」
(…晋ちゃん)
「え?」
「すっごい形相で走りながら三田倉さんを探してたよ?多分今もその辺にいると思う」
「あ、ありがとう」
「後目大丈夫?すごく赤いしクマすごいよ?」
(嘘…)
「うん、ありがとう…」
ゼミの子にお礼を言い私はトイレに向かった
「本当ひどい顔…」
今は会いたくない
だけどこんな顔じゃダメだよね…
私はメイクを直しトイレから出た
廊下を歩いている時後ろから声が聞こえた
「円花!」
振り返ると晋ちゃんが息を切らし立っていた
私は早歩きで先を急いだ
「円花!ちょっと待って!」
嫌だ…会いたくない…!
晋ちゃんが後ろから追いかけてきた
「円花!」
晋ちゃんに手を引っ張られた
「痛い!離して!もう晋ちゃんと話したくない!」
「ごめん…本当にごめん!ちゃんと話そう!」
「何?喧嘩?」
「あれって須藤先輩と三田倉さんじゃない?」
周りからジロジロ見られていた
「…ここじゃ話せないテラスに行こ」
晋ちゃんに手を引っ張られ私達はテラスに向かった
いつもここで一緒に昼食を食べるのが楽しかった
だけど今はもう違う
「…円花…本当にごめん…!本当にごめん…!」
晋ちゃんが頭を下げてきた
「…ひどいよ!何でちゃんと言ってくれなかったの…?約束したよね?これからはちゃんと秘密もなしでって」
「…ごめん」
「晋ちゃんが言ったんだよ?」
「…ごめん」
「何で?何でなの…?」
「…俺の中ではもう終わった事だったんだ」
「…それでも私は言って欲しかったよ…!」
「…ごめん」
「秀兄ちゃんの事は考えなかったの…?」
「それは…」
「もちろん後悔した…俺何やってるんだろうって…」
「…最低だよ晋ちゃんがやった事は」
「……円花の言うとおりだ…俺はとんでもないことをした」
「私と清羅さんは全然違うよ…」
初めて晋ちゃんにキスをされて嬉しかった
初めて身体が重なってあの痛さが私の幸せだった…
それなのに…
何で清羅さんなの…?
それなら違う人の方が良かったよ…
「もう、清羅さんとは今後一切関わらない
隠し事もしない!
だから…俺を…許して欲しい…!」
晋ちゃんが私の肩を掴んだ
だけど
その手で清羅さんを抱いて触れたと思うと…
私は許せなかった…
私は晋ちゃんの掴んだ手を離した
「…ごめん」
「円花」
「…どんな理由があるにせよ、やっぱりそう簡単には許せないよ…
私…やっぱりショックだもん…
ごめんね…」
私はテラスを飛び出した
「円花!」
私の知らない間でそんな事があったなんて知らなかった
知りたくなかった
知りたくなかったよ…
あの事を知った今…
そんな簡単に前みたいに戻れないよ
「…っ」
私はまた涙が流れた
糸はハサミがない限り切れない
だけど身体と心で繋がった見えない赤い糸は
自分達で簡単に切ってしまうことも出来る
赤い糸でさえこんな簡単に切れてしまう
"切れた糸“は自分達で繋げないといけない
だけど今の私にはそんな勇気が持てないでいた…
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