第43話終止符

円花に言われ私はスマホの電話帳を開いた

あの事があってからもう…

この番号に掛けるなんて思ってもいなかった

掛けるのに指が震えた

*****************************************************

僕は舞由香と別れてから特に何もない日常を送っている

あの日以来…

舞由香とは連絡を取っていない

一度だけの関係…

もう終わったんだ

その時

♪♪♪

僕のスマホが鳴った

「誰だ?」

画面を見ると美菜の名前が出ていた

「…どうして?」

どうゆう事なんだ?

僕達はまだ終わってなかったのか?

僕は電話に出た

*****************************************************

『はい』

少し低い優しい声

この声を聞いてドキっとした

『…久しぶりだね、美菜』

私の名前を呼ぶ新堂さんの声

胸が締め付けられた

『…ごめんなさい!私、雅昭さんにひどい事を…!』

『良いよ、何か理由があるんでしょ?』

『…あの日父にお見合いを決められました…』

『…そうだったのか…』

『…私その日の夜家を飛び出して

その時元カレに会ったんです』

新堂さんは静かに聞いてくれた

『…それで?』

『その時元カレに新堂さんとの事ちゃんと話せってアドバイスしてくれたんです…

父がすごく厳しくて、まだ付き合っていた事話してなかったんです…』

『…そっか』

『話した途端父が怒って、別れるよう電話をされました…

横で監視されていて…私すごく怖くて…

ちゃんと言えなくて…新堂さんの意見も聞かずに…あんな事を…本当にごめんなさい…!』

『そうだったのか…大変だったんだね…

側にいれなくてごめん…』

『新堂さんは何も悪くありません…!本当にごめんなさい…!』

『良いよ、話してくれてありがとう、お見合いはどうなったの?』

『…その後お見合い当日になってする事になりました

その場所に元カレが現れて

…私を連れ去ってくれたんです

新堂さんのフリをしてくれて…

結果その場ではなくなりました』

『そっか…良かったね

元カレさんに感謝しないとね』

『はい…本当にごめんなさい』

『もう、いいよ』

『新堂さん』

『ん?』

『私…』

言うんだ、全部

『新堂さんにずっと隠していました』

『え?何を?』

『私、ずっと好きな人がいるんです』

『え?』

『…花火大会の帰りにさっき話した元カレに会ったんです、中学の時に付き合ってて気持ちのすれ違いで別れました

キスもされました…

でも私にとって彼はもう過去の人でした

公園でまた偶然再会してその時告白されました

でも私は振りました

でも…その後自分の気持ちに気付きました』

『…うん』

『だけどお互いもう相手がいる

これ以上は超えちゃいけない

だから私は新堂さんだけを愛すると決めました、

でも…キスが忘れられなかった…

何度も何度も忘れようと思いました

…だけど忘れようとすればするほど

元カレの事が忘れられないんです…元カレが好きなんです』

『………』

『勝手な事ばっかり言って本当にごめんなさい…』

ポタポタと涙がスカートに落ちた

『美菜』

『ずっと黙っていて本当にごめんなさい…!』

『…話してくれてありがとう、美菜の気持ちちゃんと聞けて嬉しかった』

『…え?』

『僕ずっとアルバイトの時から美菜の事見てたでしょ?

いつも思ってたんだ

どんな事があっても美菜は絶対に口に出さないし

先輩達にイジメられていてもずっと一人で何とかしてた

僕はそんな美菜がたくましいと思った反面いつも心配だったんだ

だから今こうして僕に初めてちゃんと気持ちをぶつけてきてくれて嬉しいよ』

『…新堂さん』

私はこんなにも優しい人を切ってしまう…

『僕も一つ謝らないといけない事がある』

『…え?』

『僕、今京都にいるんだ転勤で…』

ウソ…京都…

『黙っていて本当にごめん…

決まったのはあの電話の後で…

何度も話そうと思ったんだ

だけど連絡出来なかった…

何か理由があるのは分かっていたのに本当にごめん…』

『話してくれてありがとうございます』

『今までありがとう、最後にこうして話せて嬉しかった』

『私も…ありがとうございました

最後に話せて嬉しかったです』

『お互い違う所で幸せになろう』

『はい』

『さようなら美菜』

『さようなら雅昭さん』

そして私達は同時に電話を切った

涙が溢れ落ちた

さようならって言葉

たったの5文字なのにこれだけですべてが終わる

新堂さん私はあなたと付き合えて幸せでした

ずっとずっと新堂さんは私の憧れだった

手に届かない雲の上の人だった

そんな人に告白されて嬉しかった

私は貰ったネックレスをギュッと握りしめた

もう今日で全てが終わった

『新堂さん…』

私は今日までのこの長い恋に"終止符“をうった

そう思っていた…

けど簡単には切らせてくれなかった…


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