第41話2つの独占欲

「盟加ちゃん、お疲れ様ー!」

「お疲れ様でした!」

(ふー…今日も終わった)

「お疲れ様です、武藤さん」

「お疲れ様です、須藤さん」

前のライターが寿退社をし須藤さんがウチの担当ライターになった

「あ、そうだ来週のスケジュールですけど…」

「はい」

今はすごくお互い信頼出来るパートナーになった

「じゃあ、これで組むのでよろしくお願いします」

「分かりました」

「あ、良かったらこれ」

そう言って須藤さんがジャケットのポケから何かを取り出しウチの手に置いた

「撮影お疲れ様でした、後で行くので待ってて下さい」

そう言って飴と車のキーを渡してくれた

「ありがとうございます」

ウチはギュッと握りしめた

「ライターですから」

須藤さんはそう言って笑った

その笑顔を見てウチはドキっとしてしまった

「須藤ちょっと良いか?」

「はい!」

須藤さんは根津さんの元へ行った

「お疲れ様でした」

挨拶をしウチは駐車場に向かった

ピッ

車のキーでドアを開け中に入った

初めて二人だけでこの車に乗った

あの時何故かウチはずっと緊張していた

彼女でもないのに…

ウチは握りしめたの飴を見つめた

「のど飴…喉痛いの気づいてたんだな…」

ウチは飴を口にいれた

「…甘」

普通ののど飴なのにすごく甘く感じた

その時

コンコン

窓を叩く音がした

ウチは窓を開けた

「はい?」

「お待たせしてすみません!良かったらこれ」

そう言って須藤さんがカフェオレを渡してくれた

(これ、ウチの好きなカフェオレ…知ってたんだ)

「ありがとうございます!」

「いえいえ」

須藤さんは運転席に座った

「じゃあ、行きますね」

「はい、頂きます」

ウチはカフェオレを飲んだ

「ウチの好きなカフェオレ知ってるんですね」

「盟加さんは僕の大切な担当ですから知っておかないと」

その言葉にまたドキっとしてしまった

「飴もカフェオレもありがとうございます」

「良いんですよ、ライターなんですから」

嬉しい…だけどお互いウチらにとってはただの担当

それ以上の関係になる事なんてない

分かってる…

だけどウチはずっと一人でモヤモヤしていた

そして気づいたら口を開いていた

「…彼女居てるんですか?」

「え?どうしてですか?」

「…慣れてるから」

こんな事聞いたって仕方ないのに口が勝手に動く

その時須藤さんの顔が曇り口が開いた

「…結婚してます、今別居中ですけど…」

聞いた瞬間ウチの心が砕いた

結婚…その言葉がずっしりと来た

「そうですか…」

あれ?何でこんなショック受けてんだ…ウチ

その時ウチの頭であの人が浮かんだ

「…須藤清羅さんですか」

「え?…どうしてその名前…」

「…やっぱそうなんですね、清羅さんは今ウチの大学の先生ですよ」

「…そ、そうだったのか」

(すごく動揺している)

ウチは話題を変えた

「あ、円花元気にしてますよ」

「え?」

「ほら」

信号で車が止まっている時ウチはこの前4人で遊んだ時のプリを見せた

「本当だ、円花楽しそうで良かった」

そう言った須藤さんの目は優しい目をしていた

ウチは羨ましいと思ってしまった

「ありがとうございます武藤さん、円花の事教えてくれて」

「いいえ」

そして自宅に着いた

「ありがとうございましたあ、缶」

「俺捨てときますよ」

「いや、ウチ捨てときます」

「そうですか?ありがとうございます、それじゃお疲れ様でした」

「はい」

須藤さんは帰って行った

「さてと…ゴミ」

ウチはマンションのエントランスにあるゴミ箱に向かった

その時ゴミ箱で立ち尽くしてしまった

そしてカフェオレの缶と喉飴のゴミを見つめた

「嬉しかったな、喉痛いの知ってたんだ…

カフェオレもウチの好きなやつ知ってた」

ウチはその2つをカメラで撮った

そしてゴミ箱に捨てた

須藤さんがウチの担当だから色々気にかけてくれてんのは分かってる

あの人にとってそれ以上ウチに感情はない

それ以上の関係になんて絶対ならない

分かってる

分かってるけど…

「奥さんと離婚すれば良いのに…」

「円花だけじゃなくてウチも見て欲しい」

どうにもならないのに…

ウチの中でこの“2つの独占欲"が生まれた

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