第39話夢
パシャパシャ
「良いよー盟加ちゃん」
今日は朝から読モの雑誌撮影だった
「はい、お疲れ様ー!」
「ありがとうございまーす!ちょっとお手洗い行ってきます!」
お手洗いから出るとドアの前には読モメンモの零士が立っていた
(ゲ…最悪…けど一応先輩だし挨拶しとくか…)
「お疲れ様です、零士さん」
「お疲れ〜」
(相変わらずチャレーな…)
そして壁にウチを押した
(壁ドンかよ…)
「なあ、今日俺ん家来いよ」
(キモ!マジムリ!)
ウチの耳元で囁いた
(マジでゾッとする)
「いや、あの今日はちょっと用事が…」
(てか離せ!暑苦しい、香水クセーんだよ!)
「は?何先輩の言うこと聞けねーの?」
そう言って零士がウチの手首を強く掴む
(痛…!最悪…シカトすれば良かった…)
「気持ち良くさせてやるからさ」
(本当ウゼー!しつこい!)
ゾッ…
その時太ももから手が入った
(これ、マジヤバイやつ…気持ち悪い!)
「純情ぶんなよ、淫乱のくせに」
(もうやだ…誰か助けて!)
その時
「あ、零士さん!」
遠くからスーツを着た男が零士を呼んでいた
零士が手を離した
「…何だよ」
(誰…この人?)
「田中さん、探してましたよ?
早く戻った方がよいんじゃないですか?」
「チッ」
舌打ちをして零士は帰って行った
「ふー」
「あ、ありがとうございます」
(見たことねえ顔だな…)
「あ、すみません!勝手に入って…
でも何か困ってそうだったんで…
申し遅れました
今日からこちらの編集部でお世話になります
須藤秀一です」
そう言ってウチに名刺を渡した
「ありがとうございます、読モの武藤盟加です」
ウチは頭を下げた
須藤…秀一…
どこかで聞いた名前な気がした
『秀兄ちゃん、あ、晋ちゃんのお兄さんで秀一って言うんだけど…』
円花の言っていた事を思い出した
「円花の彼氏のお兄さんですか?」
「え?円花と知り合いなんですか?」
「円花と同じ大学通ってて友達です」
「そうなんですか!…こんな事あるんだな…」
そう言って須藤さんは笑った
大人の男性なのに笑顔は子供みたいで何か可愛かった
「勉強の為にこれから撮影にも顔出させて貰うのでよろしくお願い致します!」
そう言って須藤さんは頭を下げた
「こちらこそ、よろしくお願いします」
ウチらは握手をした
「じゃあ、僕はこれで」
「はい!」
あんな子供みたいな可愛い笑顔をした大人の男性なんて初めてだ
数々付き合って来た男達とは皆違う
ウチは帰って行く背中を見つめていた
撮影が終わりエントランスを出た
その時
「あれ、武藤さん」
車の窓から須藤さんが顔を出した
「あ、お疲れ様です」
「お疲れ様です、今帰りですか?」
「はい、駅まで歩いて帰ります」
その時遠くから零士の声がした
(うわ…最悪…どうしよ…会いたくねえ…)
「あの…」
「はい?」
「良かったら送りましょうか?」
「え?や、でも」
「零士さんに見つかったらヤバイんでしょ?それに女の子一人じゃ危ないし」
「!!」
「こんなオンボロで良かったらどうぞ!」
須藤さんはそう言ってさっきのあの笑顔を見せた
(何かズルいな…)
「じゃあ、お願いします」
「はい!」
ウチは助手席に座った
「じゃ、行きましょうか」
そう言って須藤さんはナビをセットし運転し始めた
車なんて数々の男のん乗ってるし
慣れているはずだった
なのに今この二人だけの状況で緊張してる
そんな時須藤さんが口を開いた
「武藤さんはどうして読モになろうと思ったんですか?」
「…ウチ最初はモデルとか全然興味なくて
元々この目とか、身長とかずっとコンプレックスでした」
[盟加ちゃんの目怖ーい]
[あ?何ガン飛ばしてんだよ?]
[お前巨人かよwwwそれでも女かよww]
ウチは拳をギュッと抑えた
「自分が大嫌いでした)
その時新堂さんが口を開いた
「…そうなんですか?僕は良いと思いますけどね、盟加さん綺麗ですし」
その言葉にドキっとした
「ありがとうございます…」
「いえいえ!あ、話きっちゃいましたね、すみません…」
「いえ…JKの時、モデルのスカウトされたんですけど
迷ってて
そんな時藤谷先輩がテレビに出ていて…」
ウチはその時の事を思い出した
❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈
あれは高2の時
SistarGirlにスカウトされた後だった
部屋には当時付き合っていた和真がいた
「ハァ…どーっすかな…モデルなんて…」
「お前がモデル?ありえねえよ」
「だよな…んっ…和真」
「お前はこうして俺に満足させてくりゃ良いんだよ」
こいつは所詮ウチの身体目当てで付き合ってる
(まあ、和真の言う通りモデルなんてありえねーよな)
「んっ…ハァ」
ヤッてる最中リモコンを踏みテレビが着いた
その時藤谷先輩がTVに出ていた
「今日のゲストは藤谷唖伊羅ちゃんです!」
「こんにちは」
その時藤谷先輩は18歳だった
「どうして読者モデルになろうと思ったんですか?」
[最初は私、モデルなんて興味なかったんです
ずっとこの目とか身長とかコンプレックスでした
男子にはバカにされるし
友達は、モデルみたいで羨ましいとか言ってくれたけど…内心はバカにされているんじゃないか…って
だから素直に受け止められなくて…
そんな時SistarGirlにスカウトされました
最初はすごくとまどいました
自分なんかが良いのかな…って
でも気づいたんです
《コンプレックスをあえての自分自身の武器としようと…》
私みたいに同じように悩んでる人もいると思うんです
だからこそバカにしてきた奴らを見返そうと
そして、《こんな私でも輝ける場所を見つけたと言うことを私と同じ悩みを抱えている人を知って欲しいと
そう思ったからこの仕事をやりました
ウチはその言葉が胸に刺さった
❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈
「この言葉がウチには忘れられなかったんです
何かまるでこの世界に引っ張られたみたいな気がして…」
「なるほど…良い言葉ですね」
須藤さんは笑って聞いてくれた
この人と話すと落ち着く
普段語らない事も語ってしまう
不思議…
「藤谷先輩みたいには慣れなくても、
これからウチらがそう言う事を教えられるモデルになれば良いと…
コンプレックスに悩んでる人を勇気づけられたら、まだ自分の良さに気づいていない人達を輝かせたら良いなーって
そう思ったから読モになりました」
ウチは気がつけばペラペラ話していた
(ヤバ…語りすぎた)
「…すごいですね盟加さん…僕も昔から小説家とか
ライターの仕事に就きたくて
だけど中々見つからなくて、普通のリーマンやってたんですけど
やっぱ何か違うなって
そんな時雑誌の編集長をしている友達がいたんです」
「お前今女性ファッション誌の編集長だろ?仕事どう?」
「そうだよ、まあやる事多いし
男の俺からしたら学ぶことばっかだよ
でも楽しいんだよな」
「…楽しいのか?」
「何が楽しいって
俺等が一生懸命企画して作った案件が通って、皆で作ってそれが一つの雑誌になるんだぜ?
その雑誌が書店とかコンビニに並ぶんだ
それを読者が買ってくれて読んで貰っていることが何より嬉しいし楽しい
モデルだけいたって意味ないんだ
モデルが読者を輝かないといけないなら
俺らがモデルを輝かさせないといけない
だけどそれだけだったら読者に伝わらない
だからこそ俺はモデルも読者も輝ける雑誌を作りたいと思ってる」
「…そう言ったあいつの目は輝いてて
何かこっちも勇気を貰えたというか…
だからライターの仕事してみようと思ったんです
あいつには叶わないですけどね
それでも俺は俺なりの雑誌を作って
すべての女性を輝かせる雑誌を作りたいんです
ってすみません俺しゃべりすぎましたね」
ウチはこの言葉を聞いて感動し共感した
「いえ、素敵です
ウチら似てますね、須藤さんは
全ての女性を輝かさせる雑誌を作りたい
ウチはまだ自分の良さに気づいていない人達を輝かせたい」
「一緒に頑張りましょう」
「はい!よろしくお願いします!」
「こちらこそ」
そして自宅に着いた
ウチは車から降りた
「送ってくれてありがとうございました!」
「武藤さん!」
「はい?」
「俺は貴方を応援します!そして必ずあなたを輝かせるような雑誌を作ります
貴方の良さを伝える雑誌を書きます!
今日はお疲れ様でした、おやすみなさい」
「…ありがとうございます!よろしくお願いします!
…おやすみなさい」
ウチが言った後須藤さんは帰って行った
人に自分の"夢“を話したんなんて初めてだ
須藤さんだけはウチのこの"夢“をバカにせず聞いてくれた
コンプレックスも褒めてくれた
そして…須藤さんとウチはお互い似たような"夢"を持っていた
ウチは同じ仲間がいて嬉しかった
そしてこの“夢“を絶対実現させようと今日さらに思った
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます