第37話偽りの彼女

「んっ…はっ…」

あたし…今新堂さんとキスをしてる

こんな事絶対ダメだ

だけどあたしはその掴まれた手首に引き込まれた

だから…手を離せなかった

しばらくして唇が離れた

「新堂さ…ん」

「村田さん、君が好きだ」

嬉しい…

あたし達両思いなんだ…

だけどあたしには涼汰がいる

そう思うと悲しくなった

だけど今だけは今だけは…

この時間をあたしだけのものにしたい

例え新堂さんに彼女がいても…

「…連れてきてごめん、ちゃんと帰すから」

「はい、あたしどこまでも新堂さんに付いていきます」わ

「ありがとう」

そして京都に着いた

夕焼けがとても綺麗だった

「綺麗ー…」

「そうだね…とりあえず観光でもしようか?

連れてきたの俺だし」

(今俺って言った!?)

「あっ…」

新堂さんがハッとする

「…ごめん素が出た」

そう言って照れていた

(かわいい…)

「行こ…」

新堂さんが手を伸ばした

「はい」

あたしはギュッと手を握りしめた

手を繋いでると実感できる

それからあたし達は観光を楽しんだ

そして宿を探しようやく見つけた

「はい、2名様ですね、彼女さん浴衣どうされますか?

こちらから選んで頂けます」

《彼女》女将さんに言われて嬉しかった

あたし達は浴衣を選び部屋に入った

「わあ…素敵…綺麗」

部屋は和室で広くてとても綺麗だった

この空間にはいまあたしと新堂さんだけなんだ

そう思うとすごく緊張してきた

「ご飯まで時間あるし浴衣着て外回る?」

「あ、はい!そうですね!」

あたし達は浴衣に着替えた

「村田さん着替えた?」

「は、はい!」

浴衣姿を見て新堂さんの顔が赤くなった

「…かわいいね」

「…あ、ありがとうございます」

あたしもつられて顔が赤くなる

「あ、行こうか」

「は、はい」

あたし達は浴衣を着て外へ出かけた

外は幸せそうなカップルがたくさん歩いていた

あたし達は違う…

だけど今はそれでも良い

新堂さんといれるだけであたしは満足

あたし達は近くのお土産屋に入った

その時ネーム入りのブレスレットが目に止まった

「これ、かわいい…」

…カップルに…人気か

あたし達は違うもんね…

他のを見ようとした時

「買おうか」

新堂さんが後ろから話しかけてきた

「で、でも!」

(あたし達は違うし…)

「今日ついてきてくれたお礼として受けとってくれないかな?」

「…分かりました」

「ありがとう、すいませんそこのブレスレットお願いします」

新堂さんが注文をし店員さんが作り始めた

「はい、村田さん」

そして出来上がったブレスレットを渡してくれた

「ありがとうございます!」

(すっごく嬉しい…!)

「…俺も作って貰ったんだよね」

お揃い嬉しい…!

絶対なくさないようにしよう

その後も色々回った

そして夕食の時間になった

「そろそろ行こうか」

「はい!」

部屋に戻ってからしばらくして料理が来た

「わあ、美味しそ〜頂きます」

私は料理を次々口に運んだ

「どれも美味しい〜」

そんなあたしを新堂さんが見て笑った

「本当美味しいそうに食べるよね」

「あっ…」

(ヤバ…あたしも素が出た…)

「…引きますよね」

「引かないよ、俺たくさん食べる子好きだし」

「ありがとうございます」

そして全部の料理を食べ終わった

「ごちそうさまでした!すごく美味しかったです!」

「良かった、喜んで貰えて、じゃあ後で布団持って来てくれるみたいだし温泉行こうか」

「はい」

あたし達は着替えを持ち露天風呂に向かった

「じゃあ、後でね」

「はい!」

風呂場に向かい露天風呂に浸かった

ちゃぷん

「気持ちよい…」

窓から見える夜空が綺麗だった

だけどこの景色を見るのも

新堂さんと過ごすのも明日で最後…

明日になればもう終わるんだ…

風呂から上がり浴衣に着替えた

出ると新堂さんが椅子に座っていた

(前髪降ろした所、初めて見た…かっこいい…)

「村田さんどうかした?」

「前髪降ろしたの初めて見ました」

「え?あ、そっかいつも上げてるからね、俺幼く見られるから」

「…素敵です」

「ありがとう」

あたし達は部屋に戻った

「!?」

部屋に戻ると布団が縦に2枚くっついて敷かれていた

「さすがにこれはマズイよな…俺あっちで寝るよ」

そう言って新堂さんが布団を持って移動しようとしていた

明日でもう…新堂さんとは会えなくなる

だったら今…あたしに触れて欲しい

あたしは新堂さんの手を止めた

「村田さん?」

「このままで良いです」

「え、でも…」

「あたしに最後の時間を下さい」

あたしは新堂さんにキスをした

「村田さ…ん」

「下の名前で呼んでください」

最後で良いから…

「舞由香」

新堂さんはあたしの名前を呼んでくれた

すごく嬉しかった

それだけで涙が出る

「嬉しい…です…ありがとうございます」

涙がポロポロ落ちた

新堂さんがあたしの涙を指で拭ってくれた

あたしはその手に触れた

「あたしに…触れて下さい」

最後の時間が欲しい…

新堂さんと一緒にいる時間

「舞由香」

あたしの名前をもう一度呼んでくれた

そしてキスをしてくれた

「んっ…」

パラ…

髪をほどかれそのまま布団に倒れた

「んっ…ハァ…っハァ…っ」

好き…大好き

「…っ新堂さん」

「俺も下の名前で呼んで」

「雅昭さん」

「好きだよ舞由香」

「あたしも好きです…!雅昭さん!」

そしてまたキスをした

シュル

そのまま浴衣の帯を解かれた

「あっ…」

新堂さんに身体を見られるのは恥ずかしかった

あたしは一気に赤くなった

「かわいいよ、舞由香」

そう言って新堂さんはあたしの肌に優しく触れた

「あっ…ん」

あたしも新堂さんの肌に触れた

繋がった身体で触れ合う肌と肌が熱かった

「…っハァ‥っ舞由香すごく熱いね」

「…っハァ…ハァ…雅昭さんも熱いですね」

「お互いドキドキしてるんだな」

そう言って新堂さんが笑った

あたしもつられて笑った

「舞由香」

「雅昭さん」

そして何度も何度もまたキスをした

新堂さんが側にいる

あたしはそれだけでもう幸せ

そしてあたし達はそのまま眠りについた

しばらくしてあたしは目を覚ました

横にいる雅昭さんの寝顔をあたしは見つめた

その時新堂さんが口を開いた

だけど…口にしていた名前はあたしじゃなくて…

「…美菜」

本当の彼女の名前だった

あたしは気付かされた

身体で繋がってもあたし達は心では繋がれない

あたしは本当の彼女じゃなくて

身体だけの…疑似恋愛だけの…

偽りの“彼女"にしかなれないことを…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る