第34話禁断の扉

とうとうこの日が来てしまった

私は今日お見合いをする…

庭にあるししおとしの音が

現実を突きつける

「まあ、綺麗なお嬢様ですこと」

「いやいやぼっちゃまもハンサムですな〜美菜、ご挨拶しろ」

「…初めまして新川美菜と申します

本日はよろしくお願い致します」

「あら、ご挨拶がきちんと出来たお嬢様ですこと、ほら宗次郎ご挨拶して」

「初めまして、白鳥宗次郎と申します

本日はよろしくお願い致します」

「あらあら緊張しちゃって

じゃあ後は若い二人でお話ししなさいな」

「はい、お母様美菜さん行きましょう」

「はい」

私達は庭に出た

「美菜さんご趣味は?」

(…趣味なんてないよ…)

私は嘘をついた

「…料理ですね」

「そうですか!得意料理は何ですか?」

その時昔涼汰君に作ったハンバーグを思い出した

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付き合っていた頃二人で昼食を食べていた

「涼汰君…お昼パンだけなの?」

「…俺の家母親あまり帰って来ないから」

「…ごめんなさい」

「いいよ別に」

私達はその後無言になってしまった

私はそれを聞いて後悔した

お弁当を広げた時涼汰君が口を開いた

「うまそうだな…ハンバーグ」

「私、料理あまり出来なくて…ハンバーグだけ作れるんだけど」

「ふーん…食べてみたい」

「ハンバーグ?良いよ」

私は涼汰君にハンバーグをあげた

その時

「うまい!」

初めて涼汰君の笑顔を見た

「涼汰君私が涼汰君のお弁当作るよ!」

「え?」

「涼汰君のお弁当作りたい!」

それから私はお母様と一緒に起きて

お弁当を作った

ハンバーグも一緒にいれて…

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「へえ~食べてみたいな、美菜さんのハンバーグ、誰かに作った事あるんですか?」

「…作ってました…大好きだった人に

私の作ったハンバーグ美味しいって言ってくれて…

好き嫌いが激しくて…嫌いな人参にこっそり入れたりして…」

私はいつのまにか話していた

そして涙がポロポロと溢れ落ちた

「…ごめんなさい、私…ちょっとお手洗い行ってきます」

私はお手洗いに向かった

出た後腕を掴まれた

「…涼汰君!」

「…助けてに来た」

「え?」

「抜け出したいんだろ?」

涼汰君は私を連れて走った

その時お父様達に見つかった

「何だ貴様!」

「お父様、お母様、初めまして

美菜さんとお付き合いさせて頂いてます新堂です」

「美菜に別れさせるよう告げたが?」

(まずいよ…涼汰君)

「知ってます、だけど僕は諦めるつもりはありません」

「な、何を勝手に!」

「勝手なのはあんただろ!?

娘の気持ちも聞かず勝手に見合いなんて決めて

そんなに自分が大事かよ!

こいつはあんたの人形か?」

「貴様に関係ない!出ていけ」

「美菜は俺が貰います、行くぞ美菜」

(…涼汰君)

そう言って涼汰君は私を引っ張った

私はもう…その手を離せなかった

「ハァハァ…」

私達は走り続けた

曲がり角でラブホテルを見つけた

「来い美菜」

「え?」

私達はラブホテルに入った

フロントで涼汰君が部屋を取った

狭いエレベーターの中は身体が密着してドキドキした

手を繋いだまま…私達は部屋の中に入った

部屋の中はソファが一つと

ベッドが一つだった

手が離れた

「…とりあえずここまで来たら来ないだろ?」

「…そうだね」

「助けてくれてありがとう」

「ああ…悪いなこんな所で」

「ううん…」

涼汰君はベッドに座った

「……汗かいてるだろ?

シャワー浴びてこいよ

その間飲み物とか買ってくる」

「ありがとう…」

「じゃあな」

そう言って涼汰君は出ていった

私は着物を脱ぎシャワーを浴びた

シャアアア

シャワーが今の苦しい状況の私を開放してくれた

私はまた涼汰君の事を思い出してしまった

忘れないといけないのに…

忘れようとしようとすればするほど

どんどん涼汰君の事を思い出してしまう…

私全然忘れてなんかいないんだ…

さっき繋いだ手の感覚がまだ私の手には残っていた

シャワーから出てバスローブに着替えた時涼汰君はソファに座っていた

涼汰君は私に気づいた

「じゃあ、俺帰るわこれ飲み物とメシな」

「ありがとう」

その時

♪♪♪

私のスマホが鳴った

画面を見るとお母様からだった

私は電源を切った

「美菜?」

涼汰君はびっくりしていた

私は涼汰君の背中に腕を回した

「何して…」 

「…行かないで」

「え?」

「涼汰君はズルい…いつもいつも肝心な時に私の前に現れる…」

「…美菜」

いつだって私を助けてくれた

…付き合っていた時の記憶、声、体温、繋いだ手…抱きしめられた腕、…初めてされたキス

全部全部残ってた

新堂さんを大切にしなきゃ

忘れなきゃ

そう思って切ったのに…

「…涼汰君の事忘れないとって何度も思った、

でも出来なかった

忘れようとすればするほど

どんどん忘れられなくなったの…」

「美菜…」

私はまだ涼汰君が好き

その気持ちに気づいた

「涼汰君が…好きなの…」

私は涼汰君にキスをした

「…美菜」

涼汰君がそれに応えるよう私に激しいキスをした

「んっ…ハァ…ハァ」

唇が離れた

「…これ以上したら止まらなくなる」

「…いいよ」

「え?」

「止めないで」

私は涼汰君の目をまっすぐ見た

「…分かった、シャワー浴びてくる」

そう言って涼汰君はバスルームへ行った

ベッドに座っていたその時

涼汰君がしばらくしてバスルームから上がりバスローブ姿で立っていた

「…美菜、後悔しないんだな?」

「…うん」

そして涼汰君がキスをした

「んっ…」

激しい…でも優しいキス

涼汰君の舌が入った

クチュ…

「んっ…ハァハァ」

絡み合う舌と舌が私達を繋がらした

深い深い谷底に落ちるように私達は何度もキスをした

涼汰君が私をベッドに押し倒した

シュル

そのままバスローブを脱がした

首筋にかかる吐息が熱い

「あっ…ん」

私は身体が熱くなった

涼汰君がバスローブを脱いだ

初めて見た涼汰君の身体

「美菜…」

そして優しく私の頬を撫でる

「…好きだ」

「私も…」

私は涼汰君の背中に腕を回した

そのまま足に手が入った

「あっ…り、涼汰君…」

涼汰君がクスリと笑う

「かわいい…美菜」

目の前に涼汰君がいる

「あっ…ハァ…っハァ」

「…っ美菜…」

涼汰君と私は繋がった

私達はもう一度キスをした

私は涼汰君と関係を持ってしまった

もう後は引き返せない

私は”禁断の扉"を自分で開けた

それでもいい…

涼汰君が側にいるなら…

そう思っていたから…

だから…罰が与えられてしまった…

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