第28話ちぎれた鎖
数時間前
私は、自宅に帰っていた。
「只今、帰りました。」
ガチャ
私は、ドアを開けた。
すると奥の部屋から、怒鳴り声が聞こえた。
「美菜はまだ帰って来てないのか!」
「貴方…まだ18時30分ですよ?」
「うるさい!時間など関係ない!お前がいながら何やってるんだ!きちんと勉強はしているんだろうな?」
「それなら心配いりませんよ、あの子はきちんとしております。
貴方、あの子は来月誕生日が来たら20歳ですよ?、もうそろそろ、自由にさせてあげては良いではありませんか。」
「うるさい!あいつは、新川病院の跡継ぎ何だぞ!
この私の顔に、泥など塗ったら許さないからな!後、20歳の日に美菜をお見合いさせるぞ!」
(お…見合い…?)
私は突然の事でびっくりしてしまった。
そして足がカタカタ揺れて、
その場が動けなくなった。
「!?来月ではありませんか!!そんな急に…。」,
「もう決めた事だ。」
(そんな…)
ガシャーン
その時体身体が揺れ、
側にあった花瓶に肩が当たり、
落としてしまった。
「美菜!」
そしてそのまま、家を飛び出してしまった。
「待ちなさい!美菜!」
外を出ると、もう夜になっていて暗かった。
私の、今の気持ちのように…。
とにかく走った。
走らないと、
どうにかなってしまいそうで…。
私は、新堂さんに電話をした。
プルル
『美菜…どうかした?』
『あ、あの!…。私…。』
(どうしよ…)
何て話せば良いか、分からなかった…。
『あの…。相談したい事があって…。』
『分かった。今、外だから後で連絡するね。』
『はい…。』
プッ
そして、電話を切った。
その時、
地面に石があることに私は気づかず、躓いてしまった。
「きゃ!」
コケた瞬間、新堂さんから貰ったネックレスがちぎれた。
「どうしよう…。」
私は、ネックレスを持ったまましばらく草むらに座り込んだ。
それから、新堂さんからの連絡を待っていた。
…だけど、どんなに待っていても来なかった。
だんだんと不安になり、
私は涙をポロポロ溢した。
「誰か…。助けて…。」
お見合いなんてしたくない…。
新堂さんと離れたくない…。
その時、自転車のライトが光った。
「美菜…?」
振り向くと、涼汰君が自転車に乗ってライトを点けていた。
そして自転車を止め、河原に降りてきた。
「こんな所、一人でいたら危ないだろ…。
何やってんだよ。」
「涼汰君こそどうして…」
(やだな…今の私見てほしくないのに…)
「俺、この近くにバイト先あるから。
今はバイト帰り。」
「…そうなんだ。」
「…どうした…泣いてたのか?」
私は、涙を拭いた。
「…何もないから」
そう言って私は、目を反らした。
その時、涼汰君は何も言わず私の横に座った。
(何で隣に、座るの…?)
「泣いてるやつを、そんな簡単に放って帰れないだろ。」
「大丈夫だから…。」
(お願いだから私に構わないで…。じゃないと私…)
「あのさ、別れても友達にはなれるだろ?俺達
今は友達として、聞くから…。泣くぐらいなら、俺に話せよ
聞くぐらい、友達にだって出来るだろ?」
何でこんなに優しくするの…?
私は…あんなにひどい振り方をしたのに…。
だけどもう…。今は誰かを頼りたい…。
…私は、涼汰君に話した。
「私、20歳の日にお見合いをするの…。」
「は?それって来月じゃん!何でまた…。」
「お父様が決めた事だから…。」
「何だよそれ、おかしいだろ」
「私…罰が当たったのかな…?
涼汰君とも、新堂さんとも、付き合ってた事ずっと両親に内緒にしていたから…」
「それは違うだろ、誰と付き合おうが自由だろ?
親なんて関係ないだろ?」
「涼汰君…。」
私は、言われたその言葉が、胸に刺さった。
「嫌なら嫌ってちゃんと親に言え。
自分の人生は、自分だけの物なんだから。
そこまで親の言いなりになる必要なんてない。
自分の気持ち、ちゃんと伝えろ。
それでも親が許してくれないなら、
彼氏に言って貰って、認めさせろ。
それでまたダメだとしても、
俺が彼氏のフリをして、
いくらでもお前の親に言ってやる。
少なくとも美菜、俺はお前の味方だ。」
涼汰君が言ってくれたその言葉に、私はまた涙を流した。
「むちゃくちゃだよ涼汰君…。…ありがとう…。」
「泣くなって」
涼汰君は私を抱き寄せ、頭をポンポンした。
「頑張れ、応援してるから」
「ありがとう…」
そして、身体が離れた。
その時涼汰君が、私が手に握っていたネックレスに気づいた。
「それ、大事な物だろ?」
「うん、だけどチェーンがちぎれちゃって…
。」
「俺が直してやるよ」
そう言って涼汰君が、チェーンを直してくれた。
「よし…出来たぞ」
ちぎれたチェーンが綺麗に戻った。
「ありがとう!何から何まで、本当にありがとう!」
「大袈裟だなー。ほら、つけてやるよ」
「え?」
「前、向いて」
そして私は、前を向いた。
涼汰君が後ろから、ネックレスをつけた。
耳元にかかる吐息が、ドキドキして熱かった。
シャラン
そしてリングが、前に来た。
「ほら、出来たぞ。
もう絶対壊すなよ、彼氏さん泣くぞ。」
「ありがとう、気をつけるね」
私はリングを、ギュッと握りしめた。
「じゃあ俺帰るわ。早く帰れよ、危ねーから。」
「うん…。ありがとう…。」
「頑張れよ。」
「うん…。」
そして涼汰君は、帰って行った。
(涼汰君、本当にありがとう…)
「頑張らないと…。」
そして私は、自宅に帰った。
靴を脱ぎ、奥の部屋に向かった。
「美菜!どこ行ってたの!!」
私はリングを、ギュッと握りしめた。
言わなきゃ…全部…。
勇気を振り絞って…。
「心配かけて申し訳ございません!
お父様、お母様、お話があります。」
「話…だと?」
「美菜?」
ゴク
唾を飲み、私はゆっくりと話をした。
「…私は今、お付き合いさせて頂いている方がいます。」
私がそう言った瞬間、
「何…だと」
お父様が眉を上げ、険しい顔になった。
(怖い…。だけど言わないと…。)
「私は、その方としか一緒になりません。」
「お前、自分が何言っているのか分かってるのか!
別れなさい!今すぐ連絡しろ!」
「嫌です!私は彼を愛しています!
彼と一緒にいたいんです!」
お父様に反抗したのは今日が初めてだった。
今までは全部、お父様に従ってきた。
その時
「お前は、この私に恥をかかせたいのか!」
パチン
頬を叩かれた。
叩かれた頬が痛かった。
初めて痛みを感じた。
涙がポタポタ溢れた。
「貴方!」
「お前が連絡しないなら、私が連絡する!スマホを貸せ!」
「…分かりました…!連絡致します…!」
私は、新堂さんに電話を掛けようとした。
その時
♪♬♪
私の、スマホが鳴った。
画面を見ると、新堂さんからだった。
『…はい。』
『もしもし?美菜?遅くなってごめんね…。相談って何かな?』
新堂さんの優しい声…。
だけど…
この声を聞くのは今日で最後…。
『美菜…?』
『…突然ご…めんなさい…。
もう…新堂さんとは…一緒にいられません…。別れて下さい…。』
『え?ちょっと待って!どうゆう事?
説明してよ美菜!僕、何かした?』
『新堂さんは何も悪くありません…。
私の勝手な都合です…。』
『ちょっと待って…!』
『今まで有難うございました…。さようなら…』
プッ
そして私は、電話を切った。
「来月のお前の誕生日に早速お見合いだ。
準備しておけ。」
バタン
そう言ってお父様は、書斎に向かった。
「うっ…」
私は、自分の部屋に上がった
「美菜!」
ドアを開け、鍵をかけた。
ガチャリ
こんなの…あんまりだわ。
その時、またネックレスのチェーンがまたちぎれた…。
「どうして…?」
さっきまでは、あんなに綺麗に戻ってちゃんと付いていたのに…。
「新堂さん…。ごめんなさい…。」
私は、リングを強く…強く…握りしめた…。
このネックレスが、私達の関係を今まで強く繋げていた。
だけど…今日で、その関係も終わってしまった…。
私達の関係はまるで、
“ちぎれた鎖”のように、
この、ネックレスのチェーンと同じように、
バラバラにちぎれ、
そして…
終わりを告げるかのように…
儚く、散ってしまった…。
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