第27話叶わない願い

「あ!新堂さんからメッセージ来た!」

あたしはあの後、

あれから新堂さんと仲良くなり、

ツイッターのDMでやり取りをするようになった。

今では少しずつ、

お互いの事を知ってきた仲だった。

その時、新堂さんからDMが来た。

『こんにちは、今何してるの?』

『今は自宅でゴロゴロしてますよ(^^♪

新堂さんは?」

『栗山公園でポン太の散歩しているよ(^^)』

ポン太は新堂さん家のワンちゃん

シュナウザーでオスの3歳

「新堂さん散歩中なんだ〜!」

その時、ドアから声がした。

「舞由香ーお母さん、モカの散歩行ってくるから留守番よろしくねー」

「待ってママ!あたし行く!」

「え?珍しい…。いつも行かないじゃない。」

「いいの!今日は行きたい気分なの!」

「そ?じゃあ頼んだわ。」

ママはそう言って、階段を降りた。

あたしは早速、メッセージを返信した。

『楽しそう〜!あたしも今からモカの散歩なんです(≧▽≦)

ご一緒して良いですか?』

『いいよ^_^』

新堂さんから返事を貰い、

あたしはおしゃれをし着替えた。

少しでも、あたしの事知って欲しい…。

…でもそんなことしても、無駄だった…。

「行ってきます!」

気がついたらあたしは、走り出していた。

「はあっ…はあっ…」

こんなに走ったのは、初めてだ。

(新堂さん…。新堂さん…。)

あたしは新堂さんの名前を、

何度も頭の中で呼び続けた。

「いた!」

新堂さんは、草むらでポン太とじゃれていた。

(私服…。かっこいい…。)

初めて会った、スーツの時と全然違う…。

「新堂さん!」

「あ、村田さんこんにちは。

どうしたの?モカちゃんに走らされた?」

そう言って、新堂さんが笑った。

「あ…」

気がついたらあたしは、汗をかいていた。

「はい」

その時新堂さんが、ハンカチを渡してくれた。

「ありがとうございます…。」

今までの男なら、

うまく計算出来て、かわいいあたしを演じれていた。

でも、新堂さんの前だとうまくその計算が出来ない…。

「モカちゃん初めて見たな、かわいいな。」

そう言って新堂さんは、モカを撫でた。

あたしは、ドキドキしてしまった。

その時

ヒュッ

「危ない!!」

遠くから、叫び声がした。

「え?」

その時、あたしの目の前に、フリスビーが飛んできた。

「きゃっ!」

(当たる…!)

目をつぶったその時、

…シーン

「あ…れ」

(当たってない…?)

「大丈夫?村田さん?」

顔を上げると、

新堂さんが片手でフリスビーをキャッチ、

反対の手であたしの肩を抱き寄せていた。

「…へ?」

すぐ近くに、新堂さんの顔があった。

(ちちちちち、近ーい!)

(だ、大丈夫です!ありがとうございます!)

あたしはとっさに、下を向いてしまった。

その時

「ご、ごめんなさい!あ…、あ当たりましたか?」

男の子二人が、泣きべそをかきながら走って駆け寄ってきた。

「僕も彼女も大丈夫だよ、心配してくれてありがとう。もう泣かなくて、良いからね。」

新堂さんはそう言って、

男の子二人の頭を撫でフリスビーを返した。

「すみませんでした!ありがとうございます!」

その男の子達は頭を下げ、そして帰って行った。

(優しいな…。)

《彼女》

そう言われたのが嬉しかった。

違う意味だろうけど…。

「村田さん?もう大丈夫だから。」

ボーッとしていたあたしを、

新堂さんは笑って背中をポンポンしてくれた。

触れられた背中が、熱くなった。

「ちょっと涼しくなって来たし、歩こうか。」

「は、はい!」

こうしてあたし達は、公園を歩き続けた。

歩いている間、

新堂さんはずっと色んな話をしてくれた。

新堂さんのこと、

知れば知るほど嬉しかった。

デートを味わえた気分で、

私はもっと一緒にいたいと思ってしまった。

その時、新堂さんが口を開いた。

「喉乾いたね。」

「そうですね、何か飲みます?」

「飲もうか。」

「この近くで、カフェがあるか調べてみますね。」

あたしはアプリで、近くのカフェを調べた。

その時、ペットOKのカフェを見つけた。

「ここのカフェ、ペット大丈夫みたいです!」

「へえーそうなんだ。どれどれ〜?」

新堂さんはそう言って、

あたしのスマホを覗いてきた。

さっきの距離よりも、

もっと近くなった気がした。

「あ、美味しそうなメニューもいっぱいあるね。いいね、行こうか。」

「はい!」

そして私達は、カフェに向かった。

カランコロン

ドアを開けると、

店内はペットを連れた人がたくさんいた。

犬用遊び広場があり、

ポン太君とモカは、早速一緒に遊んでいた。

もう仲良くなったみたいで、今の私達みたいで嬉しかった…。

「ポン太とモカちゃん、もう仲良くなったんだな。」

「そうみたいですね!」

「嬉しいな。」

「はい!」

「あ、何か頼もうか?」

「そうですね!」

そして私達は、注文をした。

しばらくして、ケーキとドリンクが運ばれてきた。

「わあ〜かわいい♡」

あたしは早速、写真を撮った。

カシャ

(へへ♡興味の思い出♡)

「今日の思い出に、一緒に撮りませんか?」

あたしは勇気を振り絞り、新堂さんを誘った。

「いいよ」

(やったー♡)

そしてあたしは、新堂さんと写真を撮った。

カシャ

(やった♡ツーショットだ♡)

「ありがとうございます!」

そして撮った後、ケーキを口に運んだ。

「う〜ん♡美味しい♡」

「村田さん美味しいそうに食べるね。クリーム口についてるよ。」

(え!嘘!恥ずかしい!)

「え!どこですか!?」

「ごめん、嘘。」

「も〜!やめてくださいよ〜!焦るじゃないですか〜!」

「はは、ごめん。ごめん。」

そう言って悪戯な顔で、新堂さんは笑った。

その時

♪♪♪

スマホが鳴った

「あ、僕だ。ちょっとごめんね。」

新堂さんはそう言って、席から離れた。

(誰だろう…。)

あたしはドリンクを飲んだ。

その時

『美菜?どうかした?…うん。分かった。

後でまた、電話するね。」

(えっ…今美菜って言った…?) 

《美菜》と言う女性の名前が電話から聞こえた。

しばらくして、新堂さんは電話を切った。

そして、席に戻ってきた。

「お待たせして、ごめんね。」

「あ、あの…み、美菜って…?」

あたしは動揺して、声が少し震えた。

「ああ、彼女だよ。」

新堂さんはそう言って、照れくさそうに笑った。

《彼女》

その言葉に動揺して、

あたしは飲んでいたグラスのドリンクを床に落としてしまった。

ガシャーン

「ちょ…村田さん大丈夫!?」,

「は、はい…。」

「お客様大丈夫ですか!?」

落ちたグラスの破片が、

あたしの今の気持ちを砕いた。

もっと新堂さんと一緒にいたい…。

もっと知りたい…。

もっと仲良くなりたい…。

そう心の中で願っていた。

だけど…

あたしの願いはこれ以上、

“叶わない願い"だったということを…

今、知らされた…。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る