第29話伝えたい
三田倉のいない日が、続いていた。
…明日にはウチで継続で働くか答えが出る。
「三田倉さん、どうするんですかねー?せっかく仲良くなったのにー」
「三田倉さん、だいぶ助けてくれてたしな。」
高畑と武田さんが、三田倉について話していた。
俺だって本当は、一緒に働きたい…。
もっと仕事を教えたい…。
「このまま継続で、働いてくれると良いんだけどねー…。」
店長はそう言って考え込んでいた。
(皆…ごめん…。)
俺は、心の中で皆に謝った。
そして俺は、再び自分の仕事に戻った。
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店長に、継続で働くか聞かれてからもう4日経っていた。
「もう明日には、答えを出さないといけない…。」
だけどまだ…
私の気持ちは固まっていなかった。
「どうしよ…。」
本当はまだ…
あそこで働きたい。
だけど…
まだ、井上さんとの事が解決出来ていないままだった…。
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「…井上!おい井上!」
「…えっ」
「ボーッすんな!ポテト焦げるぞ」
店長に言われるまで、俺は気づかなかった。
「えっ…わ!」
俺はいつのまにか、ポテトを焦がしていた。
「すみません!!」
「何かあったのか?」
「…いや、その」
「まあ、何があったかは聞かん。
けどそんな調子だと集中出来ないだろ。
休憩取って頭冷やしてこい。」
「けど…!」
「井上、お前は良く動いてくれる。
まあ、俺に対しての態度は相変わらずデカイけどな。
たまには自分から休め」
「すみません…。店長…。」
「何かお前が素直だと変な感じだな…。
いいから行ってこい!
いつもの生意気なお前じゃないと、俺は承知しねーからな!」
店長はそう言って、俺の頭をクシャクシャにした。
「ちょ…!店長!」
(…有難うございます。迷惑かけてすみません…。)
「有難うございます。」
店長にお礼を言い、俺は休憩室に向かった。
俺は机に座り、この前の事を考えていた。
「俺最低だよな…。
2回も三田倉をビビらしたもんな…。
はあ…、どうしよう…。」
けどあの時の俺は、あれしか方法が思いつかなかった。
奪い取るなんて…、出来ない…。
でも謝らないと、皆に迷惑がかかる…。
「何悩んでんの?」
顔を上げると、梨絵が立っていた。
「三田倉さんと何かあったんでしょ?」
「……」
梨絵は、俺に対していつだってするどかった。
「ウジウジ悩んでるなんて雪都らしくない!」
「梨絵…。」
「あんたはウジウジ悩むタイプじゃないでしょ!」
「…」
「悪いと思ってんなら、謝れば良いでしょ!あんたは自分が悪いと思ったら、謝るタイプでしょうが!
ウジウジしてるくらいなら、自分の気持ちちゃんと伝えな!」
「…けど」
「けど何?」
「謝って、…許して貰えるのか?」
「そんなの、謝らないと分かんないでしょ!」
「むちゃくちゃだな…。」
「悪いことしたら、まず謝るでしょ!」
梨絵に言われ、俺はやっと気がついた。
「…そうだよな、サンキュー…。
スッキリしたわ。」
「そ?そう?良かった!
だってあたし、雪都のこと…。」
「俺達、やっぱり幼なじみだな。」
「…そうね。」
「俺のこと、1番分かってるのはやっぱお前だな。」
「はいはい…。」
「じゃあ俺、戻るわ。」
梨絵に背中を押され、俺は三田倉に謝りに行くことを決めた。
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いつだって、雪都を見ていた…。
いつだって、一緒に過ごしてた…。
だから雪都の様子がいつもと違うだけで、
あたしは、雪都に何があったのかはすぐ分かる。
昔から雪都の、1番側にいたのはあたしだから…。
だけど…。側にいてもそれ以上の関係には慣れない…。
なりたくても…。叶わない…。
雪都にとってあたしは、ただの幼なじみでお姉ちゃん的存在…。
ずっと側にいてたからって、
彼女じゃなきゃ、側にいたって意味がない。
雪都に早く、気持ちを伝えたい…。
幼なじみじゃなくて、彼女になりたい。
伝えたいのに…。
だけど…。
昔から一緒にいた幼なじみという関係が壊れてしまいそうで…。
それが、ずっと怖くて…
あたしは、言えずにいた…。
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俺は、職場に戻った。
「皆さん、迷惑をかけてすみませんでした!」
俺はそう言って、頭を下げた。
「何だ、井上。気持ちわりーな。」
武田さんはそう言って、びっくりしていた。
「すみません…!もう切り替えました。」
「そうか、なら仕事戻れ」
そう言って、店長は笑った。
「はい!」
そして俺は、仕事に戻った。
午後からはしっかりと気持ちを切り替え、
仕事に打ち込んだ。
「有難うございました!」
「よし、ここまで。井上、上がれ。」
「はい!お先、失礼します。」
俺は従業員に挨拶をし、更衣室に向かい着替えた。
店を出て、ダッシュでチャリを漕いだ。
早く…。早く…。三田倉に謝りたい…!
ちゃんと、話したい!
俺の気持ちも、ちゃんと”伝えたい“
俺はチャリを漕ぎながら、三田倉に謝罪する事と、そして…告白をすることを決めた。
決めた今、
俺は、三田倉の家にダッシュで向かった。
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