第22話決心
「お母さん、じゃあ、行ってくるね!」
「行ってらっしゃい。」
あの後私は、井上さんの事はなるべく考えないようにした。
そして今日は、晋ちゃんのプレゼントを買いに出かけた。
明日はいよいよ、晋ちゃんの誕生日。
ガチャ
私は玄関を出て外に出た。
「晋ちゃんのプレゼントどうしよかな…。」
そして近くのショッピングモールまで、歩いていて考えていた。
ショッピングモールの前には、今日は平日なのに、やけに人が多かった。
その時近くで何かの撮影?があった。
パシャパシャ
「いいよー!瑠那ちゃん!」
瑠那ちゃんが、撮影をしていた。
「わあ…。あれって北浦瑠那ちゃん!?綺麗…。」
北浦瑠那ちゃんは、雑誌Ladysの専属モデルだ。
今女子大生がなりたい憧れとして、人気がある。
「瑠那ちゃんお疲れ様〜!」
「はあい〜!ありがとうございました〜!」
「綺麗だったな…」
そして瑠那ちゃんの撮影が終わった。
その時、後ろから声がした。
「円花?」
振り返ると晋ちゃんが、紙コップを持って立っていた。
「秀兄ちゃん!?」
「どうした?一人でショッピングか?」
「あ‥えと、晋ちゃんのプレゼントを買いに来たんだ。秀兄ちゃんは?」
「俺はここで仕事。
今ライター研修中で、こうやって撮影の現場見学来て勉強してるんだ。」
「そうなんだ!すごーい!」
「…ありがとう」
その時、秀兄ちゃんは笑っていて嬉しそうだった。
「円花は晋一の誕生日プレゼント買いに来たんだっけ?何するか、決めた?」
「それが全然分からないんだよね…。
晋ちゃんには内緒にしてるから聞けないし…。」
「まあ、確かに男性のプレゼント選ぶのって難しいからな…。
よし、分かった!今日は片付け終わったら、仕事終わるから、俺も付き合うよ。」
「え?いいの!?ありがとう!秀兄ちゃん!」
「良いよ。大事な子の為なら。」
「え?」
「あ、妹としてな。
じゃあ後で行くから、1階のアイスクリーム屋の前で待ってて。」
「分かった!」
「じゃあ後でな。」
「うん!」
そして私は、アイスクリーム屋の前で待った。
しばらくして、秀兄ちゃんが来た。
「円花、お待たせ!」
「ううん!」
「よし!じゃあ行くか!」
「うん!」
そして私達は、エスカレーターに乗り、
三階のメンズ階に上った。
エスカレーターを上がると、
人がいっぱいいた。
「わ!」
「ほら、円花危ないから。」
そう言って秀兄ちゃんが、身体を抱き寄せた。
私は、顔が赤くなった。
「ふー…危なかったな。円花大丈夫か?ん?どうした?」
そう言って、秀兄ちゃんが私の顔を除きこんだ。
「あっ…ごめん!」
そして顔が赤くなる私を見て、秀兄ちゃんが身体を離した。
…秀兄ちゃんは昔から、私を助けてくれていた。
私にとって、いつも頼りになるお兄ちゃんだった。
「秀兄ちゃんいつもありがとう!」
「どうした?」
「私、いつも助けられていたよねー!
秀兄ちゃんが本当のお兄ちゃんなら良かったのにー!」
「…」
その時、秀兄ちゃんの顔が曇った。
「秀兄ちゃん?」
「…俺は、円花の兄貴にしか慣れないのか…?」
「え?」
(…それってどうゆう意味?)
「悪い!円花はドジだからな〜!
昔から俺がいないと危ないし!」
「ひっどーい!当たってるけどー!」
「ははは、ほら行こ!」
「うん!」
そして私達は、メンズ階を順に回って行った。
*********************************************
【秀一side】
俺は小さい頃から、円花を本当の妹のように見てた。
ドジで、泣き虫で、
どこか危なっかしくて…。
いつも、俺の後ろについてきて、
俺をお兄ちゃんと思って接してくれた。
そんな所がすごく、可愛いかった。
円花がだんだん成長して、可愛くなっていく時、
突然俺の中での円花の感情が変わった。
妹としての可愛いじゃなくて、
一人の女の子として、
円花を可愛いと思った。
俺は円花に恋をしていた。
だけど円花は、
俺じゃなくて、…晋一をずっと見ていた。
晋一も、円花が好きだった。
俺は、二人が両想いだとすぐに分かった。
だからこれは、俺だけの…
《秘めた恋》にしようと決めた。
この二人に叶う事はないから…。
今は兄貴として、
円花の側にいるしか俺には出来ない…。
「…ちゃん!秀兄ちゃん!」
「え?」
「これなんてどうかな?」
「え?あ、そうだな…。」
「もう!聞いてる〜?」
「ごめん、ごめん。」
「あ、これも良いかもー」
真剣に晋一へのプレゼントを選ぶ円花、
晋一がよっぽど好きなんだな…。
羨ましいよ、晋一…。
「晋一がよっぽど、好きなんだな。」
(しまった…!つい口に出してしまった。)
「好きだよ?」
「…」
分かっているのに、何で聞いたんだろう…。
「あ、もちろん好きだけど、
私は昔から二人とも大好きだよ?」
(俺は兄貴としてだろ…。)
「一人っ子の私を、秀兄ちゃんと晋ちゃんがいつも支えてくれた。
私ね、二人が本当のお兄ちゃんになってくれればなー…。って本当に思ってたんだ…。
でもね、違ったんだ。」
「違った?」
「例え本当のお兄ちゃんじゃなくても、
昔三人で一緒に過ごしたあの時間は、
私にとって、
本当の兄妹になれた気がした時間だし、大事な時間なの。
だから、兄妹じゃなくたって関係ない。
ずっと一緒にいた時間が全部、私の大事な思思い出だから。
だから…
ずっと今まで一緒にいてくれた秀兄ちゃんと晋ちゃんは私にとって、
大事な人で、大好きな人なの。
だから私は二人とも大好き!」
その言葉を聞いて俺は涙が出そうになった。
初めて聞いた円花の気持ち…。
俺も、三人で過ごしたあの時間がとても楽しかったし、大事な時間だった。
本当の妹が出来たみたいだった。
例えそれが短い時間でも、
円花の言うとおり、三人で一緒に過ごした時間が全部
俺にとっても、
三人にとっても
大事な時間で大事な思い出だ。
円花は、そんな大事な事を俺に教えてくれた。
「秀兄ちゃん?」
「…ありがとな。だったら俺も、しっかりと円花の兄貴の役目果たさないとな。」
その時俺は、晋一が好きなブランドがここの階にあることを思い出した。
「そういえば、ここの階に晋一が好きなブランドがあるんだよ。」
「本当!?あ、そういえば晋ちゃんのお財布ちょっとボロボロだった気がする…。」
「じゃあ財布にしたらどうだ?」
「そうする!ありがとう!
やっぱり秀兄ちゃんは頼りになるなー!
私一人だったらずっと迷ってたよー!」
「困ったら俺を頼りな。円花の為にいつでも駆けつけてやるから。」
「ありがとう!」
そして俺達は、晋一が好きなブランド店に入った。
無事財布を買い、店を出た。
「やったー!買えたー!」
「良かったな。」
「うん!」
その時
ピコン
LINEの通知音が鳴った。
円花はスマホを出し、LINEを開いた。
「あ…、晋ちゃんからだ…。忘れてた…。」
その時円花は、少し浮かない顔をしていた。
「晋一?」
「うん…。」
(何かあったのか…?)
けどこれ以上は、聞けない。
「じゃあ俺、帰るな。」
「あ、うん!今日は本当にありがとう!」
「また何かあったら言えよ?これ俺の連絡先な。いつでも連絡して来い。」
そして俺は、円花に連絡先を教えた。
「ありがとう!」
「じゃあな」
そして俺は帰って行った。
ここからは二人の問題だ。
俺が入るべきじゃない。
今日、円花と一緒に過ごせて嬉しかった。
兄貴の役目も悪くないなと思った。
俺はさっき、円花のあの浮かない顔を思い出した。
二人の問題だけど…。
だけど、大事な妹が辛い目に遭ってるなら
黙って見過ごす訳にはいかない。
俺は晋一に電話を掛けた。
プルルル
『はい、何?兄貴』
『お前、明日誕生日だろう?だから先に言っとく。
おめでとう。』
『ありがとう』
『晋一』
『何?』
『円花を泣かすような事だけは、絶対するなよ。』
『…分かってるよ。』
『俺さ』
『何?』
『円花の事、ずっと好きだった。』
『え?』
『だけど、お前らの中に入るつもりはない。』
『え?』
『だけどな、晋一。
これだけは覚えてろ。』
『何?』
『お前がもし、円花を泣かすようなマネをするなら…。
その時は俺が円花を貰う、じゃあな。』
ツーツー
そして俺は、電話を切った。
これは宣戦布告だ。
「晋一…俺は本気だからな。」
俺は"決心"した
円花の兄貴として、
大事な妹として、
これからは、
円花を守るということを…。
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