第7話貴方と結び付きます

「新堂さん、遅いなあ…。」


私はお祭りの入口で待っていた。


スマホを何度見ても、


新堂さんからの着信がなかった。


「どうしよ…。」


悩んでいたその時、遠くから足音と声が聞こえた。


「美菜ちゃん!」


振り返ると、息を切らし、新堂さんが立っていた。


「新堂さん!」


私は新堂さんの元へ走った。


「ハァ…、ハァ…、遅く…、

なってごめん…!」


「大丈夫ですか?何かあったんですか?」


「ハァ…、道に迷ちゃって、


その時、女の子が


ハァ….、


ここまでの公園の道、ハァ…、


教えてくれたんだけど、


何か…元カレ?的な子が現れて、


で絡まれて、


…それで、


助けて貰ったし、…ほっとけなくて、


…そしたら今度は、ハァ…、


渋滞で、


車、混んでて…、


駐車場、見つからなくて…、


それで、ハァ…、


やっと見つけて、…本当に…、ごめん!」


「そうだったんですね…。災難でしたね…。」


「本当にごめん!せっかく久々のデートなのに!」


新堂さんはそう言って、頭を下げた。


(こうゆう包み隠さない所…新堂さんらしいな…。)


「全然大丈夫ですよ、行きましょう。」


「美菜ちゃん…、ありがとう。」


そして私達は手を繋ぎ、屋台を回った。


その時


「あれ?新堂?」


その男性は、私達に声を掛け、そして新堂さんを見て驚いていた。


「…峯田?」


(新堂さんの知り合いかな?)


「久しぶりじゃん!何、お前彼女いたの?」


「そうだよ。美菜ちゃん、こいつ峯田。

俺の中学の時の同級生。」


「初めまして!新川美菜です!」


「かわいいー!俺、峯田和樹です!

新堂とは、同クラだったんだー!」


「そうなんですか!」


「峯田、お前何でここに?」


「俺引っ越したんだよ、最近このへんに。」


「そうだったのか…。って言えよ!」


(新堂さんそうゆう顔するんだ…。)


無邪気に笑う新堂さんの姿、初めて見た気がした。


「わりぃ、わりぃ」


「ったく…。そういやお前、一人?」


「いや、林と斉藤と俺ん家のマンションの屋上で呑んでる、今じゃんけんで負けて買い出ししてた。お前も来る?

花火も見えるし、彼女さんもおいでよー!」


「いや、さすがにそれは…。美菜ちゃんどうしたい?」


「私は平気ですよ。」


「よし!決定ー!いこいこー!」


こうして私達は、峯田さんのマンションに向かった。


峯田さんが、屋上のドアを開けた。


ガチャ


開けると男性2人がシートを敷いていて、お酒を呑んでいた。


その二人が、私達に気づいた。


「おかえりー!峯田早くね?ってあれ!?

もしかして新堂?」


「さっきそこで会ってさー!」


「久々だな、林!」


「おう!」


「おー雅!久々〜!」


「おう、相変わらずだな、斉藤。」


「お前もな」


「美菜ちゃん、こいつが林。同じサッカー部だったんだ、

で、こっちは斎藤。

斎藤とは中3の時の同クラなんだ。」


そう言って新堂さんは、私に二人を紹介してくれた。


「そうなんですね!」


「新堂の彼女?」


林さんと、斎藤さんは、私をマジマジと見た。


「そうだよ。てかお前ら、見すぎ。」


「初めまして、新川美菜です。」


私は二人に挨拶をした。


「かわいいじゃん!美菜ちゃん。

隣座って〜!座って〜!おしゃべりしよ〜!」


斎藤さんはかなり酔っ払っていて、シートをポンポンしていた。


「アホか、何で斎藤と座るんだよ。」


ペチ


新堂さんはそう言って、斎藤さんの頭を叩いた。


「ちえー。何だよ、雅ばっかしー。」


「何がだよ。」


賑やかなその場が、とても楽しかった。


「…ふふ、お邪魔します。」


そして私達は靴を脱ぎ、シートに座った。


「じゃあ、まあーとりあえず乾杯しますか!美菜ちゃんは未成年?」


そう言って峯田さんが、私に聞いてきた。


「あ、はい」


「じゃあ、オレンジジュースあげる!」


「ありがとうございます。」


「じゃあ、久々の再会?を記念してカンパーイ!」


「カンパーイ!」


ゴクゴクゴク


そして私はジュースを飲んだ。


「美菜ちゃん聞いて〜!こいつさ〜中学ん時…」


林さんが、ニヤニヤしながら話し掛けてきた。


「ちょ!お前、美菜ちゃんの前でやめろよ!」 


その時新堂さんはあたふたしていた。


「え〜」


「やめろって!」


「あはは」


そしてその後私達は、色んな話をした。


新堂さんの昔のことを色々聞いた。


気がつくと、21時を回っていた。


新堂さんと私以外、皆寝てしまっていた。


「皆さん、寝ちゃいましたね…。」


「しょーがないなこいつら…。

何時から呑んでんだよ…。」


そう言って新堂さんは、散らかったゴミを片付けた。


私も、一緒に手伝った。


「でも意外でした」


「え?」


「…中学の時、新堂さん授業中先生に当てられて、

あたふたして、

先生に返事をする時間違って、

『はい!お父さん!』

なんて呼んでいたなんて。」


「あ〜もう!やめてその話は!

…父親が塾講師していて、その授業僕も受けていたから…。

つい癖で…。あー俺、恥ずかしい…。」


そう言った後、新堂さんの顔は赤くなっていた。


「…ふふ」


「笑わないでよー。」


「ふふ、ごめんなさい。」


片付けを終えたその時、


「あ、朝顔!綺麗…。」


朝顔の花壇が近くにあった。


私は、その場にしゃがんだ。


「お、結構咲いてる、

美菜ちゃんの浴衣の柄と同じぐらい綺麗だね。」


「え?」


「美菜ちゃん、浴衣姿凄くかわいい。

いつも僕のせいで、あんまりデート出来なくて本当ごめんね…。」


「ありがとうございます…。そんな…、今こうして、一緒にいられるだけで、私は幸せですよ。」


その時、


新堂さんが後ろから、私を抱きしめた。


「ありがとう…。」


私は、新堂さんの腕に手を置いた。


「これからも、よろしくね。」


「はい…。」


バーンバーン


ソ花火の音が聞こえた。


そして私達は、キスをした。


私は舞由香のおばあさんが言っていた、


あの言葉を思い出した。


【美菜ちゃんの朝顔は貴方と結び付く】


新堂さん私…。


これからも、


この朝顔の鶴と同じように、


長く、長く、


"貴方と結び付きます”


そう決心したのに…。


このあとまさか…。


あんな事になるなんて思わなかった…。



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