第6話恋愛の長続き

正直、羨ましかった。


彼氏の為にかわいくするとか、


彼氏の為に浴衣を選ぶとか、


今までのウチにとってはありえない事で、


こんな夏イベの祭りの日に浴衣を着るなんて、


今まで絶対ありえなかった…。


本気の恋なんてしたことないし、


これからだってずっと、軽いままの関係で、


いつも通りの関係だと思ってた。


だけど、


彼氏の為に必死に浴衣を選ぶ、円花の姿を見て、


ウチは羨ましかったんだ。


だから今日、初めて浴衣を着た。


元々持ってはいたけど、


柄じゃないと思い、ずっとしまいこんでた。


多分着ることは一生ないと…


思ってたから。


だけど着てみると意外に、


暑いし、苦しいし、しんどい。


足も痛いし、頭も重い。


「はあ…。」


スマホを見ると、約束から30分は過ぎて

た。


「何やってんだよ、龍司の奴…。」 


ウチの彼氏

武田龍司たけだりゅうじ

23歳 

龍司とは、

高校の時夜遊びしていた時に、

ナンパされた。

まー、別に悪い奴じゃないし、

話も合うし割と楽しい。

相変わらず時間にはルーズだけど。


「遅っせえ…。」


イライラしてる時


♪♪♪


スマホが鳴った。


画面を見ると龍司からだった。 


ウチは、すぐさま電話に出た。


『おい、龍司どこだよ!!』


『は、俺着いてるけど?

お前こそどこだよ。』


『入口でずっと待ってるつーの!』


『え、俺もだけど…盟…加か?』


その時龍司が、ウチを見つけた。


そして電話が切れ、こっちに走ってきた。


「遅いつーの!」


ウチがそう言った瞬間、


唖然として龍司がウチを見た。


(何?やっぱ変なのか??)


「お前、それ…。」


「何だよ…。」


「…かわいいじゃ…ん。」


そう言って龍司は、顔を赤くした。


「かっ…!//」


かわいいなんて言われ慣れてないから、


ウチは顔が赤くなった。


「いつものお前なら、だいたいジャージとか、スウェットだから…。

浴衣姿初めて見た…。変わるもんだな…。」


龍司の顔がどんどん赤くなるから、ウチまで赤くなる。


「…うるせーよ。」


あたしは龍司を蹴った。


「いてえ、お前…、褒めたのに…って顔赤くね?」


「うるせ!見んなバカ!」


ウチは顔を反らした。


「…っぷ」


「…何笑ってんだよ」


わりぃ、わりぃ、なんつーか…、

嬉しいからさ」


「は?」


「お前とはぶっちゃけ、ナンパで知り合ったし、

俺も遊びで十分だったし、身体の関係で十分って前までの俺ならそれで良かった。」


(龍司…。)


「お前も俺とはどーせ、遊びだろうなーと思ってたから」


初めて聞いた龍司の気持ち…。


龍司の言った通り、ウチもそれで良かった。


「だからこう、なんつーか、そうやって、

初めて浴衣姿を俺に見せてくれて、

お前と何か初めての、本当のデート?

…恋人っぽい事?をしてるって感じがした、

…つーか

あーうまく言えねえ!!

だから…なんつーか、まあ、そうゆう事で嬉しいって事だよ。」


そして龍司の顔が、また赤くなった。


こんな龍司初めて見た。


(龍司…)


「ウチも、正直ギリギリまで本当は、いつも通りの格好で行こうと思ってた。


けど今回初めて、ウチのダチに彼氏が出来たんだ。


んで、今日地元の花火大会に行くらしくて、


初めての浴衣デートだからって、


その彼氏の為に必死に浴衣を選んでた。


その姿を見て羨ましいと思った。


彼氏の為に浴衣を選ぶとか、ウチにはありえない事だし、


この浴衣だって、何回か着ようとは思ってた。


けど着る前から、柄じゃないって思って、勝手に諦めてた。


けどなーんか、ダチの姿見てたら、


逆にこっちが何か勇気を貰ったつーか…。」


彼氏の為に浴衣を選んで、彼氏の為に浴衣を着て、


かわいいって言ってもらいたくて、


褒められたくて、


皆必死に頑張る。


あの浴衣の店の中でも、そーゆ奴がたくさんいた。


「盟加」


「だからウチも、一回は…、そうゆうのも…、悪くねーかもと思って着てみたんだよ。

龍司なら別に、見てせてやっても良いかなーって、

思ったんだよ!」


そう言った瞬間、龍司がウチを抱きしめた。


初めて龍司の、ゴツゴツした身体や、


腕の感じが伝わった。


「ちょ…!」


「お前…、そんな事言うとか、可愛すぎだから…。」


「は?」


「俺、今スゲー嬉しい!」


龍司はそう言って、さっきよりも力強く、


ウチを抱きしめた。


「俺が初めての、本当の初デートの相手って事だろ?」


そっか…。


今日これが、本当の本当のウチの初デート。


「うん…。」


ウチは龍司の背中に、腕を回した。


そしてウチらは屋台を回った。


祭りがこんなに楽しいなんて、


思ってなかった。


そしてウチらは、花火を見た。


バーンバーン


何とも思っていなかった花火が今日、


すげぇ、綺麗に見えた。


「来年も一緒に花火見ような、お互い浴衣着て。」


「ハア〜??やだよ」


「え、着てくれねえの?」


龍司の顔がしゅんとした。


(分かりやすい奴…。)


「…しょーがねーな、考えといてやるよ。」


「マジで!?」


「バーカ!」


ウチはギュッと龍司の腕を掴んだ。


(大好きだよ、…龍司。絶対口には出さないけどな!)


その時ウチは舞由香の婆さんが言っていた言葉を思い出した。


【盟加ちゃんの蝶は恋愛の長続き】 


龍司さっき、ウチを抱きしめてくれた。


龍司は浴衣の姿のウチを、おちょくらず、笑わず、


きちんと受けとめてくれた。


まるでこのゆかたの柄に描かれた花と蝶のようだ。


龍司との"恋愛の長続き"を教えてくれたようだった。


そして心の中で、


これからもずっと…


龍司と一緒にいるとウチは決めた。





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