第3話友情

「じゃあ、行ってきまーす!」


家を出ると、外で晋ちゃんが立っていた。


「あれ?晋ちゃん?」 


「よう。」  


「どうしたの?」


「円花と一緒にこれから大学行きたくて、迎えに来た。」


「え!?」


「嫌だった?」


「う、ううん!嬉しい!」


(ウソ…!夢みたい!)


「良かった、じゃあこれから一緒に行こ。」


「うん!」


そして、私達は大学まで一緒に行った。


手も、デートしてから自然と繋げるようになった。


「円花今日もメイクしてる?」 



「あ、うん」


「かわいい。」


「ありがとう、まだ慣れないし、下手くそだけどね。」


「けど、俺のためにしてくれてんだろ?俺は嬉しいけどな。」


そう言って、晋ちゃんが照れくさそうに笑った。


それから歩いている間、


晋ちゃんと色んな話をした。


いつもの通学路も、晋ちゃんといると全然違う。


特別な通学路に変わる。


「円花」


「着いたぞ、大学。」


「え、あ…」


(もう着いたんだ…。早いな…。)


「じゃあ、俺こっちだから。」


「あ、うんまたね。」


少し恥ずかしかったけど、私は小さく手を振った。


その時


「朝からラブラブ登校ですかあ〜??」


後ろから声がした。


振り返ると、ニヤニヤしながら、舞由香が立っていた。


「舞由香!」


「はよ〜っ、てあれ!!円花今日メイクしてる!?」


そう言って、舞由香が私の顔をマジマジと見た。


「あ、う、うん、ほ、ほら、

もう大学生だし、何もしないのはなーって。」 


「え〜怪しい〜。何か妙に焦ってるし〜。

けど今の円花、すんごいかわいい!キラキラしてる!」


「それはメイクでだよ。」


「違うよ!女の子は彼氏が出来たら、

かわいいって思われる為に、まず見た目から頑張るの!

髪型変えたり、今の円花みたいにメイクを始めたり、

そうやって自分磨きをするの!

で、知らないうちにそれが内面として出てくるの!

恋愛は、自分を変えてくれる最大のパワーだからね!」


【恋愛は、自分を変えてくれる最大のパワー】


その言葉が、ずっしりときた。


確かに私、


晋ちゃんと昨日初めてデートをした時 、


【かわいい】って言ってくれたのが嬉しくて、


もっと【かわいい】って言って貰いたくて、


今日もメイクした…。


「とりあえず今日は色々話聞くからね!行こ!」


「うん!」


そして私達は、ゼミに向かった。


ゼミに着くと、美菜と盟加が座っていた。


そして、私達に気づいた。


「おはよう、舞由香、円花」


美菜がにっこり微笑んだ。


「おはーってあれ!?円花メイクしてね?良いじゃん!」


盟加はそう言って、私のメイクに気づいた。


「あ、本当だ、かわいい。」


美菜がそう言って、私の顔を覗いた。


「だよね〜!だよね〜!!」


そして、舞由香の声が大きくなった。


「皆…。ありがとう…!!」


私は少し、照れくさかった。


だけど、褒められて嬉しかった。


そして講義を受け終わり、昼食の時間になった。


私達は、食堂に向かった。


「さて…。じゃあ、何があったか教えて貰わないと〜!」


舞由香が言った瞬間、


三人がワクワクしながら私を見つめた。


私は、昨日のことを話した。


「昨日、晋ちゃんとデートしました…。」


「マジで!?もう?え、え、どこ行ったの?」 


舞由香は一人、テンションが高かった。


「待ち合わせして、映画館に行って…。」 


その時、昨日の晋ちゃんのあの時の表情を思い出した。


「円花?どうかしたの?」


美菜に言われるまで、気づかなかった。


「え‥」


「考え事?何かあるなら聞くよ?」 


そして私は、あの時の話をした。


「…映画予告が始まった時に、

昔晋ちゃんと秀兄ちゃんと、

良く見てた映画をDVDで観てて、

あ、秀兄ちゃんっていうのは晋ちゃんのお兄さんで、

須藤秀一すどうしゅういちって言うんだけど…。」


「そうなんだ、それで?」


「うん、で、私、懐かしくなって、秀兄ちゃん事を晋ちゃんに聞いたんだ。

そしたら、晋ちゃんの表情が曇って、

明らかに様子がおかしくて…。」


「何かあったのかな…。」


「分からない…。」


「どうしたんだろう…。晋一さん。」


「うーん‥あ、ごめんね!こんな話して…。」


「ううん、私は全然大丈夫だよ、円花はもう大丈夫?」


「うん、ありがとね!」


その時、舞由香が話題を変えてくれた。


「あ、そういやデート服は何着たの〜?」


「あ、前に舞由香と一緒にショッピングした時に買った、白レースのワンピースだよ。」


「ああ!あれか!」


「白ワンピ?」


そう言って盟加が聞いてきた。


「前にね、円花と一緒にショッピングした時に

円花がマネキンに飾られた白レースワンピを気になっていて、、

で、試着したんだけど、

円花買う勇気がなくて、

あたしが、

じゃあこれは、初デートする時の準備として買いなよってアドバイスしたんだ。」


「あのときは、本当ありがとう!舞由香!」


「良いよ〜!円花がまさか、それを着るなんてね〜!!嬉しいよ!」


「確かに男ってワンピ好きだよな。」


そう言って盟加が笑った。 


「で、で、何か言われた??」


「かわいいって…。」


「きゃ〜!!良かったじゃん!!」


「着て正解だったな。」


「良かったね、円花。」


「皆ありがとう!」


その後私は、


ランチを一緒にした事、


ゲーセンに行ってぬいぐるみを取ってくれた事、


プリクラを一緒に撮った話など、色々な話をした。


「ふむふむ…なるほどね〜!良かったじゃ〜ん!それなら2回目のデートも成功させないとね〜!!」


舞由香が、ニヤニヤしながら言った。


「そうなんだよね…。今度、どこ行けば良いんだろ…?」


「花火大会は〜?夏だし〜!」


「なるほど!!」


「浴衣でドキドキさせちゃえば良いじゃ〜ん!」


「けど浴衣持ってないんだよね、私。」


「今からでも遅くない!今日買いに行くよ!良いよね?二人とも?」


「良いよ。」


「ウチもオッケー!」


そう言って、美菜と盟加が賛成してくれた。


「よし、決定〜!そうと決まれば、

円花は晋ちゃんにLINEして!」


「う、うん」


そして私は、晋ちゃんにLINEを送った。


すぐさま返事が返ってきて、OKの返事を貰った。


「いいよ。だって。」


「よ〜し!じゃあ、今日いくよ〜!!」


そして、講義が終わった後、私達は商店街に向かった。


辺りを見回すと、


数々の呉服屋があり、浴衣がたくさん置いてあった。


店内は女の子達が試着をしたり、髪飾りを選んだりしていた。


皆、嬉しそうだった。


付き合わなかったら、誰かの為にこんなふうに浴衣を選んだりする事なんて、経験出来なかったんだろうな…。


皆と同じ位置に立てれて、嬉しかった。


「こんなにいっぱいあるんだ…。」


「早くしないと売り切れちゃうからね〜!円花とりあえず試着しよ〜!」


そう言った舞由香の目はキラキラしていた。


「う、うん」


そして三人が、私に似合いそうな浴衣をたくさん持って来てくれた。


「う〜ん、円花、赤どうだろう?」


舞由香が赤の浴衣を持ってきて、


「白とかどうかな?」


次に美菜が、白の浴衣を持ってきた。


「黄色とか水色とか似合いそうじゃね?」


そして盟加が、黄色と水色の浴衣を持って来た。


それから、たくさんの呉服屋を見て回り、4件ぐらいでようやく決まった。


「…うん!これ良い〜!かわいい〜!」


「だな。」


「そうだね。」


そして皆で意見が決まった。


白地に牡丹の柄が入った浴衣になった。


髪飾りも決まった。


無事浴衣も買い、私達はお店を出た。


「良いの見つかって良かったね~!あ、皆、着付けとヘアメイクは、ウチのサロンでやったげる〜!無料だよ〜ん!」


舞由香の家は美容院だ。


舞由香のおばあさんは着物・浴衣などの着付け、


ヘアメイクは舞由香のお母さんがやっている。


ふたりともすごい腕の持ち主だ。


私は何度か会っていた。


「皆、今日は本当にありがとう。」


私は立ち止まり、皆にお礼を言った。


「どした、円花?」


その時舞由香が振り返った。


「私一人だと、次のデートどうしたらいいか分からなかったし、

花火大会の案出してくれなかったら、

こうやって、自分の浴衣を買いに行くことも、着ることも、

経験なかったと思う…。

皆のおかげで本当に助かった!!

本当に感謝してる!ありがとう!」


「そんなん友達なんだから当たり前だよ〜!

ってか、それを言うならあたし達の方が、

感謝してるし〜!」


舞由香が言ってから、盟加と美菜が笑った。


「…だな。」


「‥ふふ、そうだね。」


「え?」


「あのさ円花、お礼を言うのはあたし達だよ。」


その時舞由香の目が、真剣になった。


「どうゆう事?」


「ほらあたし、こんな性格だから女子に嫌われてんじゃん?


円花と出会う前までは、ほんと自分の事しか考えてなくて、


男がいれば、女友達なんていらないって本気で思ってた。


大学もさっさと辞めてやろうと思ってた。


円花と初めて同じゼミになって、


ペアを作らないといけなかったとき、


誰もあたしとなってくれなかった…。


そんな時さ、円花、あたしを誘ってくれたよね?」


「うん…」


「あの時あたし本当に嬉しかった…。


それから、ゼミ内で悪口を言われても、


円花だけは毎日毎日、挨拶してくれて、話し掛けてくれた。


最初は正直、うっとおしいって思った時もあった。


あたしといたら悪口言われるし、


円花にだって被害を及ぶかもしれないのに…。


けどそんな事気にせず、円花はあたしと向き合ってくれた。


本当に嬉しかったんだ。


だからあたしも、少しずつ少しずつ毎日が楽しくなって、


辞めたいと思ってた大学が、今すごく楽しくなった。


円花に出会わなかったら、あたしはきっと大学に来てなかったし、辞めてたと思う。


だからあたしの方がお礼言わないといけないんだよ!


…本当ありがとね、円花。」


「舞由香…。」


「…私も、初めての大学の入学式の日、


どこに行けば分からなかった。


一人であたふたして焦っていた時、


まわりの人は皆チラチラ見て、見て見ぬフリばっかりで…。


誰も助けてくれなかった…。


あの時、本当どうしていいか分からなかった。


人見知りの性格だから、周りに聞くのが恐かった。


…そんな時、円花が私を見つけてくれた。


明るく自己紹介してくれて、


そして一緒に行ってくれた。 


あの時円花が助けてくれていなかったら、


私は遅刻をして、まわりからの評価も悪かったし 、


楽しくない大学生活になっていたと思う。


それに、


円花と出会っていなかったら、


皆とこうして、


放課後遊んだりする事もなかったと思う。


私もすごく円花に感謝してる。


ありがとう、円花。」


「…美菜。」


「ウチもさ、

最初、就職考えてなくて、とりあえずってゆーことで、大学選んだ。


そんな時、読モにスカウトされた。


読モの仕事が増えて、あまり大学にいけなくなって、


まあ、元々楽しくなかったんだけどさ。


髪色はこんなだし、メイクも濃いし、


まわりにはビビられているし、


ウチは好きでやってんだけどさ。


皆とも差があるし、


大学辞めて、読モの仕事をずっとしようと思ってた。


一回教科書忘れて、


隣の人も、周りの人も、皆ウチにビビって、


誰も見してくれないとき、


斜めに座っていた円花が、教科書貸してくれたじゃん?


自分だってないと困るかもしれないのに、


けど、円花は隣の席の奴に頼んで見して貰っていた。


あんときスゲー申し訳ないなと思った。


返しに行った時も、笑顔で受け取ってくれて、


皆がビビるこの髪色も、メイクも、円花だけがゆういつ褒めてくれた。


本当に嬉しかった。


だから、大学行こってゆう気持ちが増えたわ。


ウチも感謝してる、ありがとな円花。」


「盟加…。」


皆の気持ちを初めて聞いて、私は、ポタポタと涙が落ちた。


「あ~!もう〜…ほら、泣かないの〜!」


そう言って舞由香が私の肩を、ポンポンしてくれた。  


「皆…。ありがとう…。」


「よ〜し!浴衣も買えたし〜!

遊びますか〜!」


舞由香がそう言った後、


「そうだね。」 


美菜が笑った。


「だな、久々だし!」 


盟加も笑った。


「何か食べよ〜!!アイス♫クレープ♫」


舞由香のテンションが、どんどん高くなった。


「舞由香、食いしん坊だね。」


そう言って美菜が笑った。


そしてあれから私達はたくさん遊んだ。


クレープ食べて、プリ撮って、


カラオケ行って…。


今日で4人の"友情"は今までよりも、


もっともっと深く繋がった。


そう思っていた。


私はまだ、知らなかった。


知らない所で、


四人の"友情“が、少しずつ少しずつ、


崩れていくことを…。


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