第2話初デート
私は、朝からバタバタしていた。
「うーん、これが良いかな?こっちかな?」
鏡の前で、何回も服を合わせた。
気がつくと、ベッドの上では服の塊が出来ていた。
もう何回、ファッションショーをしたか分からない。
「ああ!もう!全然分からない!」
だって男性と出かけるなんて、私にはなかった経験だから…。
でも…かわいいと思われたい。
次の服を取り出そうとした時、ハンガーに掛けてた白のレースワンピを見つけた。
「あ、これ…。」
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【回想】
舞由香とこの前ショッピングした時、
ショーウィンドウのマネキンに、白レースワンピースが着せられていた。
私はそのワンピースに目が止まった。
「かわいい…。」
ワンピースに憧れはあったけど、着る勇気が私にはなかった。
「あ!かわいい!円花試着しなよ!」
「ええ〜いやいやいいよ!」
「何で試着ぐらい良いじゃん!ほら行くよ!」
そう言って、舞由香に手を引っ張られ、私達は店内の中に入った。
店内はかわいい女の子ばかりだった。
(皆かわいいなあ…)
舞由香が店員さんに声を掛け、
私はさっきのワンピースを試着することになった。
「…本当に着るの?」
「もちろん!大丈夫だって!似合うから!」
「そうかな…。」
私はしぶしぶ試着をした。
そして、試着を終えカーテンを開けた。
シャ
「円花かわいい!似合ってるよ!」
「本当?」
「うん!かわいい!」
「でもこれデート服じゃない?
相手がいない私には必要ないんじゃないかな?」
その時
「デートの時は彼氏に見られたい一心で女の子は全てに気合を入れる、
いつかそうなる日が円花にも絶対訪れる。
だからこれはその時の一個の準備として買いなよ!」
舞由香がそう言ってくれた。
私はその言葉を聞いて、
背中を押された気がした。
そして私は買うことに決めた。
でも使わない日が続き、
クローゼットに閉まったままだった。
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舞由香があの日、言ってくれた言葉を思い出した。
まさか、このワンピースを着る日が訪れるなんて思ってもいなかった。
「…よし!」
私はワンピースを取り出し、
着てメイクをした。
慣れないメイクをするのは、緊張した。
普段巻かない髪も、少しだけ巻いてみた。
「…こんな感じかな?」
不安になりながらも、
パンプスを履いて家を出た。
カッ、カッ、カッ
慣れない靴で歩くのは、苦痛だった。
待ち合わせ場所に既に晋ちゃんは立っていた。
「あの人かっこいい!」
「待ち合わせかな?」
晋ちゃんを見て、周りの女の子達が騒いでいた。
(やっぱ晋ちゃん、かっこ良いよね…)
「…晋ちゃん、お待たせ!」
私は晋ちゃんの元へ、駆け寄った。
その時、晋ちゃんが私を見て驚いていた。
(…変かな?)
「円花か…?いつもと違うから分かんなかった…。」
(やっぱり変!?)
「…かわいいじゃん。」
そう言った晋ちゃんの顔は、赤かった。
「…ありがとう//」
(舞由香の言った通りだった。…気合い入れて良かった♡)
「行くか。」
「うん!」
こうして私達は、映画館に入った。
晋ちゃんが、カップルシート座席を選んだ。
カップルシート座席なんて初めてだった。
私には一生座ることないと思ってた。
けど今はもう、ここに座れるんだ。
そう思うと、嬉しくなった。
「円花、何か食べる?」
「あ、待ってお金…。」
「いいから、何する?」
「いいの?ありがとう!
じゃあポップコーン!」
「今、カップル様限定で
ポップコーンとジュースの半額フェア開催中ですが、いかかでしょうか?」
「円花それで良い?」
「うん!」
「あ、じゃあ、それで。」
「はい!ありがとうございます!」
お会計を済ました後、晋ちゃんがジュースとポップコーンを持ってくれた。
「ほら、行くぞ?」
「うん!」
そして私達は、映画館の中に入った。
席に座ると、たくさんのカップルが座っていてイチャイチャしていた。
(さすが、カップルシートすごい…)
しばらくして、映画予告が始まった。
「あ、この映画!昔秀兄ちゃんと三人でテレビ版の方観たよねー!あ、そういえば秀兄ちゃん元気?」
秀兄ちゃんを思い出し、私は晋ちゃんに聞いた。
その時、晋ちゃんの表情が曇った。
(晋ちゃん…?どうしたんだろう…?)
「…晋ちゃん?」
「へ?ああ…。ごめん…。…元気だよ。」
明らかに様子がおかしかった。
(どうしたんだろう…)
そしてしばらくして、映画が始まった。
その時私は、
さっき晋ちゃんのあの曇った表情が忘れられなかった。
しばらくして、映画が終わった。
「結構、おもしろかったな。」
「そうだね!」
(さっきの何だったんだろう…?)
「そろそろお昼にする?」
「うん!」
「じゃあ、行くか。」
そして私達は、映画館を出た。
「この辺だと、和食系か中華系か洋食系か、
イタリアン系かだけどどうする?何食べたい?」
「じゃあ、イタリアンが良いかなー!」
「じゃあ、ここにしよ。」
そう言って晋ちゃんが、近くのイタリアンを見つけてくれた。
私達は、店内の中に入った。
席に着いて注文をしてから、しばらくして料理が来た。
「わあ〜美味しそう〜!頂きます!
うーん!美味しい!!」
その時、晋ちゃんが私の顔を見た。
「ん?どうしたの?」
「何か、不思議な感じだよな。」
「え?」
「円花とさ、昔からご飯一緒に食べてきたのに、
大人になってからこうして彼女として一緒にご飯食べてるって思うと、全く感じが違うんだよな。」
確かに…。
私達は昔から、一緒にご飯を食べる事が多かった。
だけど大人になってからは、一緒にご飯を食べてなかった。
そして今は、彼氏彼女として一緒にご飯を食べている。
そう思うと、意識をしてしまう。
「…そうだね、今は恋人ととして一緒にご飯食べてるもんね。」
「…照れるな。」
「うん…。」
そして、ご飯を食べ終わり、私達はお店を出た。
「晋ちゃん、ありがとう!ごちそうになってごめんね…?」
「良いから、今日は俺が誘ったんだから。
だから円花は、心配するな。」
「…ありがとう。」
「次、どこ行く?」
「そうだなーあっ!」
私はその時、アクセサリーショップのハートのイヤリング目をつけた。
(かわいいなあー、あのイヤリング、
けど、晋ちゃん興味ないよね!今度買おう!)
「どうした?」
「何でもない!ゲーセン行こ!」
私は、アクセサリーショップの斜めにあるゲーセンに指を指した。
「おう」
そして私達はゲーセンに入った。
店内を歩いている時、
私は、UFOキャッチャーのぬいぐるみに目をやった。
「かわいいー!!これー!!」
「欲しいのか?とってやるよ。」
「でも…。」
「今日の記念にな。」
チャリン
そう言って晋ちゃんは、お金を入れた。
「ほら、取れたぞ。」
「ありがとう晋ちゃん!すごく嬉しい!大事にするね!」
「大袈裟だなー。そんなんで良いのかよ?」
「良いの!今日は晋ちゃんとの初デートの記念だから!」
「そ、そうか…。」
その時、晋ちゃんが照れくさそうに鼻をこすった。
引き続き、店内を歩き回っていると、
プリクラ機からカップルが出てきた。
「記念なんだったら俺等も撮るか、せっかくだし。」
「うん!」
そして私は晋ちゃんと、初めてプリを撮った。
「俺、目デカすぎじゃん。」
「晋ちゃん盛れてるー!」
「足も長すぎだろ、ヤバイなこれ。」
「すごいね〜!晋ちゃん初めてだった?」
「好きな人と撮るのは、初めてだよ。」
私は、顔が赤くなった。
私に取って、また大事な記念になった。
「ほら、行くぞ。」
「うん!」
それから私達は、ゲーセンでたくさん遊んだ。
外を見ると、もう夜になっていた。
「もう夜かー…。はえーな…。」
「そうだね…。」
そして私達は、歩きながら色んな話をした。
そして、いつのまにか家に着いていた。
(もっと一緒にいたかったな…。)
けどそんな事、恥ずかしくて言えなかった。
「今日、楽しかったな。」
「私もすごく楽しかった!大事な記念になった!本当にありがとう!!」
「どういたしまして、楽しんで貰えて良かった。またどっか行こうな。
じゃあ、おやすみ。」
「送ってくれてありがとう、おやすみなさい!」
そして私は、家の中に入った。
そして、ご飯を食べた後、晋ちゃんにLINEをした。
『今日は本当にどうもありがとう(≧▽≦)
すごく楽しかったです!
ぬいぐるみ大事にするね!』
「送信と…。」
しばらくしてから、晋ちゃんからLINEが来た。
『こちらこそありがとう、
ワンピース似合ってた(^^)
また、どっか行こうな。』
「晋ちゃん…。」
私はベッドに寝転がり、今日の出来事を思い出していた。
初めてのデート、初めて来たワンピース、
頑張ったヘアーメイク、慣れないパンプス、
待ち合わせ場所、一緒に観た映画、
一緒に食べたランチ、取ってもらったぬいぐるみ、一緒に撮ったプリクラ。
全部私にとって大切な一日の記念日となった"初デート“になった。
忘れられない一日になった。
私は貰ったぬいぐるみをギュッと握りしめ
そのまま就寝した。
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