第22話 戦局は女神側の優勢なのです


 見えない敵に翻弄ほんろうされる獣人達。

 同士討ちを避けるため味方は存在感を残し、

「ひっ……か、体が……削られる!」

 敵は爪の先から

 その恐怖に脅える獣人の耳元で、そっとささやくチカ姉。

「怖いよね、存在が消えるって。お前の一生全否定なかったことにされるんだぜ?」

 この女絶対楽しんでるよ。先刻さっき鹿娘しかっこに何かエロい事してたし。と、そこへ――

「くらえ~!」と吠える竜娘ドラゴンがこちらに向けて口を開けた。え、マジ?

 放たれた閃光。だが、それは刹那にき消えた。

「あれ~?」と竜娘が叫んだ瞬間とき、背後の空がひらめいた。

 轟音と共に振り返ると、そこには――

「た、神竜山タルタロさんが……消し飛んだ」

「あ~、あれエトナの閃光ブレスっ!」

「え?」

 竜娘の言葉に天使しょうじょは何か思い当たったか、後列こちらに向けてその名をつぶやいた。

千鳳ちどり……さん?」



「迎えに来たわよ、天使ちゃん」

 御使さんの呟きに応える様に、お姉は姿を現した。勿論もちろん、チカ姉の能力で。

「やっぱり……迎えにって言ったわね、まさか居場所の無い現実あんなせかいに戻れって言うの?」

「お兄さんの事言ってんなら、多分それ誤解よ」

「え?」

「前に話してみたけど、あれは家に女を連れ込むタイプじゃないってかシスコン妹想いのお兄ちゃんね」

「でも私、聴いたわ。兄の部屋から女のあえぎ声を」

「あ、あえ?」と赤面するお姉。

「忘れないわ、兄さんを奪ったあいつ……ハラコノハ!」

 憎悪と共に吐き出す彼女。ん?

「それ

「チカ?」

 声は意外な所からだった。て、何その衝撃告白。

原木葉はらこのはってヤンデレ四天王の一人」

 四天王って何?

「ほ、他の女と争ってる声も聴いたわ!」

「そいつ近衛宇宙このえそらじゃね?」

「ソラ……確かにそう言ってた」

「えっとそれは、兄が妹の気を引くために?」

「それか木葉の妹みたまちゃん狙いとか?」

「あっそ」とお姉は疲れた顔で頭を押さえると、独りつぶやき始めた。そこへ、

「天使様このままでは……」

「勝負だ、そこの短髪~」

「くっ、この豚面が。ころ……」

 ぶちっと何かが切れた音がして……

「どやかましいわっ!!」

 お姉が叫んだ刹那、頭上から隕石の群れが降り注いだ。て……


 ちょ、お姉ぇぇぇぇぇ!


 かくして、戦争は終結した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る