第15話 ばったり騎士様と目が合ったのです


「あぁ! 貴様はこの間の!!」と指差す、エイロ。

「あ、三下エロナイト」と指差す、お姉。

「誰が三下だぁ!」

「三下じゃん。それより、あの銀髪は元気?」

 お姉の親し気な声に勢いを殺がれたか、「ちっ」と舌打ちする騎士。

「団長はなぁ、貴様のせいでおかしくなっちまったぞ」

「おかしくなったって?」

「貴様、団長をと思ってんだ」

「あの時はブチ切れてたんでね。もう忘れちゃったわ」

 しれっとうそぶくお姉。

「女湯だ! 公衆浴場の……」

「あ、そうだったわね。いや、我ながらナイスなチョイスでしょ?」

「ああ、そのお陰でな……団長は夜な夜な『お仕置きムーン』に通うようになっちまったんだぞ!」

「何それ?」

「ご、拷問ごうもんサロンだ。女王様と名乗る女が男を打擲ちょうちゃくする……」

 そこで騎士様、ほほを赤らめて視線を逸らす。

「え、SMクラブ? ぷっ」

「ええい、誰のせいだと思ってるっ! 笑うなそこぉ!!」

 後ろで腹を抱えながら笑いを堪えていたチサに怒鳴る騎士。

「そう言えば、手枷は外せたの?」

「解呪なら、俺が呪文といんを教わった」

「へえ、」と、お姉はどこか楽し気に返す。

「ふん、騎士の教養を侮るなよ」

 などとドヤ顔でのたまう騎士様。ちょっと可愛い。

「ま、良いわ。あたしも女神様壊しちゃったし、悪かったわね」

「過ぎた事は仕方ねぇが、あの像は世界の象徴でみなの心の拠り所だ」

「解ってる、きちんと直すわ」

「そうか、解ってくれるか……て、直す?」

「そうよ、

 そう言ってチサの方に目配せする。

「ちー姉なら、もう起きてるよ」

「了解!」とお姉の瞳が金色に光った。瞬間、

「……姉さん、おはよう」と、ちー姉が目の前に現れて片手を挙げる。

 突然現れたちー姉を見て、目を点にするエイロ。

「急に呼び出してゴメン、ちーちゃん」

……あの像を直すんだね……」

 ちー姉が指差した先には、いつの間にか大理石の女神像とその破片が召喚されていた。

「な、城の倉庫で回収していたハズの……」

 騎士が何やら呟いてる。

「始めるよ、姉さん……」

 ちー姉の瞳が紫に光り、瞳孔の時計が逆回転を始めた。

 そして、見るも無残だった女神様は、その豊満なお胸すらも元通りに在りし日の姿に戻っていった。

「終わったよ……姉さ……」

 そう言いかけて、ちー姉が倒れた。

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