第13話 何やら物騒なご神託でした


「魔女か。そう言えば、魔女狩りとかあったみたいだけど?」

「あ、それは……今から十年ほど前に邪神崇拝の風習が流行し、その信者を捕まえて拷問や処刑が行われてたのです」

「確かに、邪神がどうとかも言ってたわね」

「ええ。元々は、聖母降臨より前の時代に古の王がまつっていた神を讃えるものでして、アフロ教会側が神の御魂ソウルに背く存在として邪神と定められたに過ぎません」

「あ、アフロ教会……」

「神のソウル……」

 唖然とした様子で口々につぶやく姉二人。

 讃美歌もラップだったりして……

「自分達に都合の悪い物を排除してるってトコか。過去に滅ぼした国だか民族だかの神なんて崇拝されても困るだろうし」

 お姉がにべもなく切り捨てる。が、それにルクスさんの方が反応した。

って、なんで解ったんですか!?」

「いや、今の話で大体解るでしょ」

「解んないよ!」とチサも反論してみる。すると、

「本気で言ってんの?」と言いたげな顔をされた。解せぬ……

「姉さん、それ説明不足……」

「ちーちゃんまで」

「二人とも、いい?」とうながす姉に、チサとルクスさんが頷く。

「神様が変わるとは、それを祀っていた国が敵に滅ぼされた事を意味するの。もし自分たちが滅ぼした国の神様が残ってたら、その土地を支配するのが難しくなる。だから、宗教を利用して民衆を洗脳するの……勝った方の神様が正しいって」

「ちー姉、すごい……」

「そういう物の見方を、わたくし初めて知りました」

「中世までは大体そんなもんよね。近世辺りで露骨感増すけど」

 そうつぶやくと、お姉は不思議そうにルクスさんを見た。

「エルフって、やっぱ長命なの?」

「ええ、大体三百年はざらですけど。というかヒューマン達が短過ぎるんです」

「ま、それは良いとして、それだけ長く生きられるなら、もっと人間社会に興味を持った方が良いかも」

「それはどういう?」

「社会ってのは人間の本質が表れてるものよ。その社会の仕組みを把握すれば、そこに居る人間の習性や思考が読めてくみやすくなるじゃん」

「はあ……」と余り要領を得ない返事をする彼女。

「ま、良いわ」と疲れた顔でつぶやくお姉。

「それより姉さん、一つ気になることが……」

「気になること?」

 こくりとうなずいて、ちー姉は続けた。

「チサちゃんにいたけど……御使みつかいさんの事……」

「あ……」と漏らすお姉。さては、今まで忘れてたな。

「チサちゃん一つお願い、天使ちゃん探すの手伝って!」

 両手を合わせて拝み倒すお姉に、チサは嘆息して答えた。

「仕方ないなー。その代わり今度、鳳凰屋おおとりやの抹茶テラアイスおごりね!」

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