第11話 どうやら目を覚ましたみたいですよ


「具合はどう?」と、お姉が声をかける。

「えっと、わたくしは……それに、ここは一体……」

 エルフはゆっくり体を起こしてから不安そうに周りを見渡した。

「大丈夫、ここはあたしの家だから。あと、あたしは舞弦千鳳まいづるちどり、よろしく」

 お姉が軽く手を振る。

「勇者様のおうち?」

「だから勇者って何? ゲームじゃあるまいし、そんな在り来たりな設定持ってこられても萎えるっつか」

「……ですよねえ、いきなり世界の命運を託されたって困りますものね……」

「いや、何か勇者って単語が安っぽく感じるのよ。それと、あなた異世界人なのに?」

「ニホンゴってなんですか?」

「そう改めてかれると、どう答えたら良いか悩むけど……」

「今わたし達が話してる言葉……あなたが今いるこの国の言葉……だよ」

 そこへ、ちー姉が割って入る。

「だ、誰ですか!?」

 エルフは初めて見るその少女の姿に驚き、戸惑いの色を浮かべた。

「あたしの双子の妹、千歳ちとせよ」

「ふ、双子? たしかに顔はそっくりというか瓜二つですが……」

「あ、言いたいことは解ってる。特殊な事情でね、あたしと少し歳が離れてるの」

「特殊な事情……もしや、魔王の呪いか何かでは?」

「ああもう、そう言う世界観って事で良いわ」

 お姉はよっぽど安直な設定がお気に召さない様だ。ていうか、

「お姉は古き良きジュブナイル的ハイファンタジー世界が好きなんだよね」

「ま、また、知らないヒューマンが……」

 いちいち脅えるエルフ娘。この、なんか可愛いかも。

「自己紹介が遅れたね、末っ千里ちさとです。チサって呼んでね」

 チサは、ありったけの親しみを込めて微笑んだ。スマイルは0円だからね。

「で、あなたのお名前は?」と、お姉がたずねる。

「もっ、申し遅れました。わ、わたくしハードエルフのルクス=リア=スクルードともっ、申します!」

「落ち着いて……」と、ちー姉がなだめる様にいう。

 どうでも良いけど、エルフって何?

 ハーフエルフとかなら、なんか聞いたことあるけど……

「ご、ごめんなさい。こんな小さい子にまで気を遣わせて」

「ちー姉、見た目はこうだけど姉妹の中じゃ一番落ち着いてるからね。お姉と双子とはとても思……います」

 お姉から何か物凄い殺気を感じとり、黙り込むチサ。

「あのぉ、先ほどから『お姉』と呼ばれてるみたいですが……」

「あたし?」と、お姉が自分を指さす。

「もしや勇者様って?」

「それはどういう意味かな? 色欲エルフちゃん」

「し、色欲って……」

 お姉の眼光に思わずたじろぐルクスさん。

「ご、ご無礼を申しました。髪がその、すごく短かったものですから」

「あ、これね。ちょっとワケありなのよ」

「ワケありとは?」と問うルクスさんに、お姉は静かに答えた。

「実はあたし達、超能力者ってヤツなんだよね」

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