第10話 「ただいま」と玄関から声がしました


 出迎えた先には、疲れた顔で腰かけるお姉とぐったり寝そべる耳長の少女。

「お帰り、お姉。このが例のエルフ? 近くで見ると超絶美人さんだー」

?」

 しまった。つい……

「チサ、またわね?」

「ご、ごめんなさい。悪気は無かったんです。ただ、チサはお姉が心配で……」

 お姉は呆れたようにため息を吐く。

「ま、良いわ。てたんなら解ると思うけど、この子いま精神が不安定だから気を付けなさい」

「は、はい」

「姉さん」と、チサの後ろから別の声。

「あ、ちーちゃん起きてたの?」

「うん……チサちゃんに話はいているよ。この人、可哀想……」

「うん。だから二人とも、しばらくここで養生させて上げても良いかな?」

「構わないよ……に話し相手がいてくれると、わたしも嬉しい……」

「チサも!」

「ありがとう、二人とも。あとはチカだけか」

「チカ姉はゲーム中」

「またか、あの引き籠りめ」

「チカ姉、ちゃんと学校には行ってるよ。ただ真っ直ぐ家に帰って部屋から一歩も出ないだけ」

「あいつの学校生活どうなってんのか、一度見てみたいわ……」

「それより姉さん、この人結構危ないかも……」

「え?」

 見ると、エルフの息遣いが荒くなっている。

「まずいわ、このままじゃ」

「生き物に使うのは、少し気が引けるけど……やってみるか……」

「え、まさか……ちーちゃん!」

「大丈夫、どうせだから……」

「ちー姉!」

 チサが叫ぶと同時にちー姉の瞳が紫に光り、瞳孔に時計のような模様が浮かび上がった。

「はぁはぁっ……くっ……ころ……うりぃぃっ……ばるばるばる……めめ……たぁ……うぃんうぃん……ふふ……」

 荒かった彼女のそれは徐々に奇妙な呼吸に変わり、やがてそれも静まっていく。

「終わったよ……」

 これが、ちー姉の能力ちから原子時計エターナルタイム』――あらゆる時間を操る強力無比な能力だ。

 ただその代償として、ちー姉の時間が奪われてしまう。簡単に言うと寿命が削られるという事らしい。なんでエターナルなのか、それこそ永遠の謎だけど。

 ただ、ちー姉はこの能力のせいで

 生まれた時からずっと。

 それが、すべての始まりだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る