第9話 突然の出来事に騎士様も驚いたようです

「か、解呪しただと!?」

「手を自由に動かせるのが嬉しいだなんて初めて思ったわ」

「なら今一度……」と銀髪騎士が腕を動かそうとして、

 そこで初めてことに気付く。

「な、なぜ私の腕に……?」

「言ったでしょって。魔術なんて転移させるの初めてだけど、上手くいったみたいね」

「くっ、これを外せ」

「残念だけど、あなたの魔術だから。あたしじゃ解呪できないわ」

「転移と言ったな、『恩恵』も無しにどうやって?」

 しかし、お姉はそれには答えず代わりにこう返す。

「あ、そう言えば?」

「何……を?」

「だから、解呪したくても解呪できないんじゃない?」

 彼は言った「外せんぞ。私以外には」と。なら、唯一解呪できる彼自身が拘束されて今、一体誰がこの手枷を外せるのか?

「それが狙いか!」

「何をしてる、早くあのガキを殺せ!」

 エイロとかいう下ネタ騎士が叫ぶ。

「はっ」と返事して、鉄格子の間から騎士たちが一斉に槍をお姉に向けた。

「突けぃ!」という号令と共に槍が一斉に襲う。

 お姉の瞳が金色こんじきに光り――刹那、槍が消えた。

「なっ」と騎士が漏らすと同時に、真上から雨の如くが降り注いだ。

 慌ただしく逃げ惑う騎士達。腹を抱えて笑い転げるお姉。

「笑うな貴様、危うく死にかけたぞ!」

「あ、ごめんごめん」と銀髪の苦情に、悪びれなく返す。

「ところで、エルフちゃんは隣だったよね?」

「ああ、それがどう……て、まさか!」

「ご明察ぅ~」と悪戯っぽく返すと、お姉の瞳が淡く光った。

 気が付くと、目の前に金髪エルフが寝転がっていた。

「あ……へへ……」

 彼女は衰弱しきった様子で、舌を出したまま焦点の合わない眼でお姉を見上げた。それを見たお姉は……鬼の形相で銀髪を睨んだ。金色の瞳のまま。

「あなた、この術を今まで何人に使ったの?」

「ま、魔女審判の時に二十人ほど……」

 刹那、エルフの両手首から枷が消え――

 いきなりバランスを崩して倒れる銀髪騎士。

「団長!」

「ま、まさか足にまで……」

「因果応報って言葉、知ってる?」

 そう言うお姉の目は酷く冷たかった。

「あなたがして来た事の報い、あなた自身で受けると良いわ」

 言うが早いか、銀髪の騎士団長は淡い光に包まれ……消えた。

「き、貴様ぁ、団長をどこへ!?」

「さあね。ただ、じゃないかな?」

「何を言って……?」

 しかし、お姉はスルーしてこう切り返す。

「あたしもお腹が空いたことだし、そろそろ帰らせてもらうわ」

「はぁ? 生きてここから出られるとでも……」

 しかし、エイロが言い終える間もなく光に包まれて跳躍した。

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