第8話 ランタンの光が暗闇へと誘うのです


「ちょっと、ここ寒くない?」

 騎士達に連れられて、着いた先は鉄格子の付いた石壁の牢獄。

 手枷てかせをしたまま放り込まれたお姉が不満気に訴える。

「我慢しろ、審問の時になったら出してやる」

「一体、何する気よ。まさか裸にして変なトコ弄ったりしないでしょうね?」

「そういうのがお好みか? 魔女狩り時代の器具は残っちゃいるが、連れのエルフならともかく、誰が好き好んで

「あ?」とお姉、騎士の一人が零した言葉に厳つい視線を飛ばす。

「おや、何か気に障ることでも言ったか?」

「エイロ、その辺にしておけ」

 咳払いする銀髪に、「へいへい」と軽く返す騎士。

「そう言えば、あの子はどうなったの?」

「なんだ、あの女が責められてってんのか?」

「下らんこと言ってないでとっとと教えろ、この万年発情下ネタナイトが! 下半身に栄養行き過ぎてオツムが腐ってんじゃないの?」

「貴様、アフロの騎士を愚弄するか!」

「よさんか、エイロ!」

 お姉の挑発に逆切れするアフロの騎士様。にしても……

 ミラーボールの下でフィーバーしてそうな絵面しか浮かばないんだけど、それ。

「まあいい。エルフの娘なら隣で気絶して倒れてるぞ」

「え? まさか、あなた達……」

 嫌な想像でもしたのか、お姉が乾いた声で問いかける。

「私は何もしておらん。貴様と同く手を拘束しただけだ」

「この手錠みたいな術、何か他に仕掛けでも?」

「仕掛けというか、その術には束縛した者への『女神の恩恵』を妨げる効果がある」

「女神の恩恵?」

「知っての通り、魔術は『女神の恩恵』を受けて初めて制御できる」

 無論、お姉がそんなの知るハズも無い。が、お姉は少し考え、こう返した。

「もしかして使から?」

「ご明察。あの女は術の魔力に当てられて、禁断症状に陥ったのだ」

「禁断症状……」と、お姉は息を呑む素振そぶりを見せた。

「そういう事だ。貴様も魔術など使おうものなら、呪詛返しカウンターを喰らうぞ」

「なるほど……」とつぶやき、お姉は小さく笑った。

「あ、なんか手が疲れてきちゃった。騎士様、少し引っ張っていただけません?」

 などと、お姉は両手を前に突き出す。

「ふん、見え透いた魂胆だな。私が解呪するように仕向けようというのか?」

「その程度で解けるような術なの?」

「まあ良いだろう、こうか?」

 銀髪騎士様は両手を前に伸ばす。目の前で、お姉が満面の笑みを浮かべた。

「じゃ、

 何の事か解らず眉をひそめる騎士様。お姉の瞳が淡く光る。

 刹那、お姉の手首から光のかせが消えた。

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