第7話 ちょっとここで現実に戻るのです


「なんか、厄介なことになってんなぁ……」

 チサがつい口に出してつぶやいていると、

「チサちゃん、どうしたの?」

 お姉を幼くしたような小学生くらいの女の子が降りて来た。

 舞弦千歳まいづるちとせ

 チサ達の二番目の姉で、お姉にとってはでもある。

 あれ、いま何か変な事言ったかな?

 一卵性のハズだが、すらっと伸ばした長い髪に大人しめの性格、華奢で小柄な身体付きと、顔以外は真逆と言っても良い。

 でもなぜか、その日にお姉が食べたい物を連絡なしに作れたり、休日に行きたい場所も一緒だったりするから不思議だ。

「あ、ちーねえ。もしかして、今起きて来たの?」

「うん。それより、何かあったみたいだけど……」

「えっと、お姉がちょっとヤバいことに巻き込まれちゃったみたいで」

「姉さんが?」

「うん、なんか異世界にんじゃったらしいんだよねぇ」

「異世界……姉さん

 どこか嬉しそうにそう言って、ちー姉は笑った。

 今の口ぶりからすると、既にしている『夢』でも見ていたのかもしれない。

「良かったね、ちー姉」

「ありがと。でも、今は姉さんのことが気になるから……」

「そうだね。お姉は、騎士団みたいな人達に捕まって牢屋に入れられたところ」

「チサちゃん、順を追って説明して……」

「あ、ごめんごめん」

 チサは、これまでの経緯をちー姉に説明した。

「つまり、姉さんは御使みつかいさんという人と一緒にいるところに暴走トラックが突っ込んできて、慌てて空間転移テレポートしたらメスエルクという世界に辿たどり着いたと……」

「まー、それが世界の名前なのか国の名前なのかは、ハッキリしてないけどねー」

「今は姉さんを待つしかない……か」

「でも、なんか変な光の手錠みたいな術をかけられてるみたいだし」

「大丈夫、姉さん強いから……ケロッとした顔で帰って来るよ……」

 自信持ってそう答えるちー姉が、チサには頼もしく思えた。

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