最終話.その先
父親の突然の死にラグランは動けない。
そこへ真っ先に走ったのはローラだった。
「ジャスティン様・・・!!ジャスティン様がいないなんて・・私は・・・!」
ジャスティンが衝撃で手放した銃をローラが掴み、ローラもジャスティンと同じ道を辿ろうとする。
しかし、銃は不発に終わった。1発しか入っていなかったのだ。
「そんな・・・、ジャスティン様・・・。」
たった一人ローラを理解してくれた人。その事実に絶望し、ローラはその場にくずおれた。
その様子に、ラグラン、ルーン、モイは見つめることしかできなかった。
あれから、数日が経った。
ローラは逮捕され、街が大変なことになった元凶がミルにあるとわかり、政府はミルを直すことを許してくれなかった。
しかし、モイがミルはもうコンピュータを暴走する能力はないことをあらゆる方法でなんとか訴え、許しを得ることになった。
そして、3年後。
ミルが出会ったころと同じ状態に戻った。髪は赤いままだが、手足も胴体もある。
ミルが起動した時、ラグランは真っ先にミルを抱きしめた。
しかし、一つ問題があった。
ミルには感情が無くなってしまったのだ。目にも感情が見られない。喋ることもできない。
3人は絶望した。
「ごめんなさい、ラグラン。私の力ではこれが限界なの・・・。」
モイが自分の力量のなさに謝罪する。
しかし、ラグランだけは諦めなかった。
「気にするな、モイ。・・・ミル、思い出の場所へ行こう。」
「・・・。」
ミルは応えない。
「くっ・・・。」
試しにキスを落としてみたが、やはり何の反応もない。
やがて、最初に来た公園へとやってきた。昼なので、まだ公園はにぎやかだ。
ラグランとミルはベンチへと座る。
「ミル、お前がどんなになっても俺はお前を愛している。」
「・・・。」
反応はない。
「そうだ。お前に渡したいものがある。もう意味のないものだがな。」
そう言って、ラグランはポケットから花がモチーフのブレスレットを取り出した。モイが制御装置としてミルに贈ったものだった。
「これをはめててくれ、お守りだ。もうお前を誰のものにも渡さない。」
ミルに優しくラグランはブレスレットをミルの右腕に装着させる。
「ミル・・・!」
ミルを優しく抱きしめる。
すると、ミルの全身が光りだした・・・!
目をつむっているラグランはそれに気づかない。しかし、アンドロイドなのに体温があることに気づき、思わずラグランはミルを体から離す。
「ミル・・・?」
ミルは立ち上がり、浮かびながら光り、髪の色がだんだん青に変わっていく。
そして、目を開けるミル。そこには感情がのっていた。
「ラグ・・・ラン・・・。」
「ミル・・・!元に戻ったのか!?」
「ラグラン!」
急いでミルは駆け寄り、ラグランの胸へと飛び込む。
「ミル・・・良かった・・本当に・・・!」
「ボク・・・ひどいことしたの覚えてます・・・。そんなボクが存在していいんでしょうか?」
「モイが頑張ってくれたんだ。」
「そうだったんですね。ボク、居ても・・・いいんですね。」
「当たり前だ!」
ラグランはミルを抱きしめ、初めて深い深いキスをした。
ミルが元に戻ったことを、モイとルーンにも即座に報告した。
するとモイがミルにあげたブレスレットをアレンジし、箱にしまった。
「へへへ~。これ、あげる!」
モイはニコニコしながら、ラグランに小さな箱を渡した。開けるとそこには指輪が2個入っていた。
「こ、これは流石にまだ早くないか?」
ラグランは焦る。そこでルーンが追い打ちをかけるように発言する。
「ミルちゃんを守ってあげたいんでしょ。その証だと思って受け取りなよ。」
「わ、わかった。」
そして、飲み物を用意していたミルを呼び、ラグランとミルでお互い指輪を交換する。もちろん場所は左薬指だ。
『おめでと~!』
ルーンとモイが祝福の言葉を口にする。
「ありがとうございます。ボク、とっても嬉しい・・・。」
涙を流すミル。
ミルはモイが直す以前にはなかった体温もあり、なんだか人間に近いアンドロイドになった気がする。そこにラグラン達は驚きつつも、ミルの表情を見つめるのだった。
「ミル、愛している。これからもずっと。お前はアンドロイドだからお前より先に俺は旅立ってはしまうが、覚悟してほしい。」
「はい。ボクはそれでもラグランのことが好きです。ラグランがいなくなってもずっと心の中にいます。」
二人は抱き合った。そしてそれを幸せそうな顔で見つめるルーンとモイだった。
ー完ー
Overdrive BR なかひと @nakahito
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