ミルとマリカ

「まったく・・・役に立たない子だ。アクセル。」

 ジャスティンは拍手をしながら、破壊されてしまったアクセルの残がいを見ながら言う。

 それを聞いたモイは怒りのあまり、コンピュータ端末から少し離れてキッとジャスティンを睨みながら言う。

「なんて言い方するんです!大統領だからって、それは許せません!!アクセル君は最期にあなたに助けをもとめた・・・なのにそんな言い方・・・。」

 モイは泣きそうだ。

 そんなモイに意も介さず、ジャスティンは負傷気味のラグランに声をかける。

「よくやってくれた。ラグラン。街の様子はどうだったかね。ひどいことになっていただろう。それもみんなマリカのおかげだ。」

 やはり街の騒動はミルのコンピュータの暴走から始まったことだったらしい。

 それにしても、マリカ・・・?どこかで聞いたことのある名前だ。

 そこでハッとしてラグランは気づく。

「マリカ・・・って、母さんの名前・・・。」

「そうだ。この子はお前の母さんの生まれ変わりだよ。私が開発した。まあ、男性型が完成するとは思わなかったがね。まあ、面影はあるだろう。それにしてもよくやってくれた。ブラックボックスの回収から始まり、マリカの心の成長。非常によくやってくれた。おかげでこんな素晴らしいマリカが完成した!」

 母親のマリカはジャスティンと同じ、メカニックの研究者だった。そこで恋に落ち、結婚をし、ラグランを授かった。しかし、マリカはラグランが18歳の時アンドロイドの暴走により、命を落とした。

 そこからジャスティンは変わってしまった。

 マリカのいない世界に絶望したジャスティンは大統領という地位を手に入れ、世界を壊す決意をした。そこで、宇宙内で、研究室を作り、マリカに似たアンドロイドを作った。

 しかし、研究室は事故により、爆発してしまう。ジャスティンと他の研究員は全員助かったが、マリカを失ってしまう。そこで、ラグランがマリカを見つけ出したのだ。


「ブラックボックス回収の時から親父の操り人形だったのか・・・俺は・・・。」

「さあ!行け!マリカ!ラグランを殺せ。」

「親父・・・!ミルをそんなことに使いやがって・・・!!」

「ラグラン。マリカが完全体になった今、もうお前は用無しなんだ。」

 マリカ、行け!ともう一度ミルに対して命令する。

「はい。あなた。」

 声は無機質。表情もない。

 ものすごいスピードでラグランの目の前へと迫ってくるミル。

 ラグランは先ほどの戦闘で刺さった、破片を背中に受けながら、ミルと対峙する。

「目を覚ませ!ミル!」

 

 そのころモイは自分のノートパソコンを繋いで研究室のコンピュータにアクセスし、誰がミルをこのような状態にしたのかを調べる。

 起動にはアクセルが関わったようだ。

 しかし、根本のところはローラ・ランジュと表示される。

「ランジュって、まさか。あの・・・?」

 モイは驚愕の表情を見せる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る