「なんでこんなところにアンドロイドが?」

「わからんな。」

 そのアンドロイドは男性型で、きれいな赤い髪をしている。裸のままポッドの中で眠っている。というより、まだ起動されていないようだ。ラグランが彼をアンドロイドと認識したのは、アンドロイド特有の手足につなぎ目が見えたからだ。

「どうしたらいいのか、お偉いさんに訊いてくれ、モイ。」

『訊かなくていいから、とにかく回収してきて!アンドロイドちゃんも!』

「おいおい、いいのかよ……。」

『いいの!』

「どうやら、モイの好奇心がくすぐられたようだね。」




 アブソリュート・デルタ・カンパニー メカニックルーム。

 そこにアンドロイドが運び込まれた。

「わ~、とっても可愛い子ね~。」

「ほんとに持ってきちゃったけど、お偉いさんにはどう伝えたの?」

 ルーンが心配そうに言う。

「え。この子の事は何も言ってないわよ~。ブラックボックスの事だけ!あとは秘密!」

「どうなっても知らんぞオレは。」

ふんっ、と鼻を鳴らしながら言うラグラン。

「うふふ。アンドロイドなんて、お金持ちさんしか手に入れられないのよ~。この会社じゃ設計図も買えないもの~。」

「オレの会社の文句か。悪かったな。」

「とりあえず起動してみましょうか!」

「あーあ。ボクもどうなってもしーらない。」


ピピピピ。


「これをこうしてっと……。」

パスコードを分析して、軽々と入力していくモイ。ハッカーとしての才能もあるらしい。


「開いた!」


 ガシュウウウウウ……


むくり。

 ゆっくりと起き上がるアンドロイド。

目が開き、唐突に音が響き渡る!



ピイイイイイン、ピイイイイン!

「うわあああああああ!」

音とともに、アンドロイドが叫ぶ。


「なんだ、この音は!おい、モイ!」

「え~、私に訊かれてもわからない~、」

「そんな事言わないででなんとかしてよー!」


 ピーーーーー、ピーーーー

『緊急事態発生。緊急事態発生。』


「この子から発信されてるの?」

 どうにかしようと、モイがキーボードを叩く!だが、エラーを吐いてしまい、PCが使い物にならなくなってしまった!


「なんてことなの……この子コンピュータを停止させる力でも持っているのかしら……。」


「モイ!危ない!」

 唐突にルーンが叫び、モイをかばい、伏せさせる。

開発中のマシン類がモイに向かって飛んできたのだ!

それはルーンとモイの頭上を通り過ぎ、壁に激突して停止した。


「暴走させる力みたいね。なんとかしないと。」

 モイは早足でボックスの前に行き、何かを取り出した!

「ラグラン!これをあの子の首に!」

「制御装置か。了解した!」


 ラグランがアンドロイドに向かって走る!


バチン!


アンドロイドの首に制御装置がはめ込まれた!

と同時にアンドロイドの髪の色が青に変わる。


「あ・・・あ・・・」

 アンドロイドは力が抜け、それをラグランが支える。

 暴走は収まったようだ。

 ラグランがアンドロイドを眺める。

また眠ったように体をラグランに預けている。その瞼には一筋の涙が見てとれた。


「……アンドロイドが……涙……?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る