第5話

ところが、その出てきた弾丸は、どうやらキュウドウさんの守り神だったらしい。


頭から弾が出た後、キュウドウさんは、どんどんカラダの具合が悪くなった。


あるいは、撃たれて頭に入った2発の弾丸は、2つとも頭の中にあることで、


キュウドウさんの脳みその機能が壊れないように、何か作用していたのかもしれない。




「なんだかアタマが痛いんだ」


と、キュウドウさんはしきりに言うようになった。


もう一発の残った弾丸のせいかもしれないと思い、


それを手術で取ろうと、キュウドウさんは病院に行った。



そこで、医者から


当時の技術ではとても取り出せないような脳の奥深くに弾がある


と、聞かされた。



それを知ったキュウドウさんは、ひどくふさぎ込んでしまった。



そして、何かの発作なのか、いきなり手を前に伸ばし、


手を下に向けて、何かをにぎっているように丸く指を折って、


その手を何もない空間でふらふらと彷徨わせるようなしぐさをするようになった。




それでもキュウドウさんは戦争から帰ったあと、20年くらいは生きていた。


道を歩いていて、いきなり土佐犬にアゴに?みつかれたり、


山に入って大量のハチにさされたり、いろんな災難に遭いながら。

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