第2話

そうこうしているうちに戦争が終わった。



キュウドウさんは日本に帰ってきた。


そうして、いきなり、


戦争未亡人になった俺のばあちゃんが、


生まれたばかりの赤ん坊(俺の親父)と一緒に暮らす家に、


飛び込んできた。


この頃のばあちゃんは、まだ二十を幾つか超えたところだった。


でも、


「ああ、ああ、ああ、


出そうなんです」



と言って、家に飛び込んできて、玄関で身もだえするキュウドウさんを見て、



「お便所に行きたいのかしら?」


と思ったばあちゃんは、家の中にキュウドウさんを入れてやった。



しかし、キュウドウさんは便所には行かず、


かぶっていた兵隊帽をいきなり外すと、


しらみがびっしりついて、ぼうぼうに髪が伸びた頭を、ばあちゃんに見せた。



「なんだか、むずむずするんです」


そう言われて、ばあちゃんがおそるおそるキュウドウさんの頭を見ると、


左耳から5センチくらい上のあたりが、第一関節で切り落とした親指くらいの大きさに

盛り上がっていた。



「昔、鉄砲で撃たれたんです。


その弾が出そうなんです」


キュウドウさんが泣きそうな声で言った。



その瞬間、


ばあちゃんの目の前で、


キュウドウさんの頭にあった小さなコブみたいなものが、


「ぎょるん」


と動いたような気がした。

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