97年生きた女

 二〇十八年一月某日。


 学校で集めた衣類、食品、学校用品、生活用品などを援助が特に必要な家庭に届ける、というボランティアを行っていた。

 その日は、その集めたものを実際に彼らへ届けに行く日であった。


 車で一時間ほどかけて、集合場所の建物(そこがどこなのかは、未だに良く分かっていない)へ行き、そこで各家族にものを渡す。彼らが分からない物があれば、モンゴル語が話せる生徒と先生が助ける。

 要は、モンゴル語が話せない生徒は暇なのだ。だから、私はその間は何もせず、ただじっと席に座っていた。暇の極みだった。


 生徒は必ず、各家族の代表者と一緒に写真を撮らねばならないが、その波に乗り遅れた私は、会場に来る事が出来なくなった家族のゲルへ直接行き、物を渡してから写真を取る事になった。

 会った家族は、三十代から四十代の女性一人と十歳にも満たない男の子が一人、そして大変年老いた女性が一人。という家庭だった。他に誰か家族のメンバーがいるのかは、知らない。

 通訳係の先生と私、日本人の少女(『ウヒャァァァアアアアアァァァ!!<https://bit.ly/2TFoLCl>で紹介した乙女ちゃん)とインドから来た少女、そしてアメリカから来た少年の計五人で出向き、集めたものが詰まった袋を渡す。

 先生が私たちの出身国を代表者の女性に伝え、英語などのモンゴル語で書かれていないものを、どう使えば良いか説明してから、記念写真を撮った。


 ほんの数秒の間、ゲルの中にいた老女の話になった。

 彼女は、もう九十七歳らしい。これにみんなは驚いた。九十七歳は、モンゴルではかなりの高齢者だ。生きているのが不思議なレベルの高齢者だ。

 なんせ、モンゴルの平均寿命は六十歳前後。


 「これからも元気で過ごしてくださいね」


 と伝えたかったが、モンゴル語でどう言えば良いか分からず、結局は伝える事が出来なかった。モンゴル語、もっと勉強したいな。


 そして最後に「さようならバヤルッラー」と「ありがとうバヤルタェー」をお互いに掛け合い、学校へと帰って行った。


 私が知っている、数少ないモンゴル語を使う事が出来て、勝手に満足している。

 ただ未だに、モンゴル語で「ありがとう」と「さようなら」と言う違いが分からないけど。困っちゃうな......。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る