いつか腕の中で
西澤瑠梨
第1話
いつか腕の中で
ガイア。
今は貴方のことを愛せないけど、私は誰かに愛されたいから私のことを愛して。きっといつか貴方のことは好きになれると思うから、なんて言えるわけない。そんな一方的で無責任な愛は求められないでしょう?
そう言った彼女は生真面目で面白い。
愛だの恋だの言ってこんな自分の欲のために時間を無駄にして欲しくはないのだと、そう言う。愛されたいとばかりに、私にその硝子のような瞳で訴えながら、言葉だけで私を拒否しようとするのだ。可愛い私の愛し子。私に時間の概念は存在しないのに。
世の中たいていの人間は自分の欲望を剥き出しにして生きている。人間なんて欲深い生き物だ。自分が作っておきながらそう思い、だからこそ美しく儚く、面白いのである。その中に紛れて流されてしまえばいいものを、何を戸惑っているのだろうかと未知の世界への扉を勝手に開けてやりたくなった。
真面目で堅苦しくて、そんな彼女はその瞳にたくさんの感情を埋め笑う。何にも縛られず、何も考えず私の腕の中に落ちてくれば良いものを。
何も考えずに欲望のなすがまま手に入れたいと望めばいい、そしていつか、自分を望んでくれたなら…そう思うなんて思ってもみなかったが、思いのほか心地よい。こぞって人間たちが愛だの恋だの騒ぎ立てている気持ちが少しだけわかったような気がする。癪だがこれも、一種の娯楽だ。
いつか腕の中で 西澤瑠梨 @Luri0n
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます