向かいのマンション

 昔住んでいたアパートの向かい側に、駐車場を挟んで、九階建てのワンルーム・マンションがそびえていた。

 各部屋の玄関が私の部屋から一望でき、老若男女の出入りする様は、どこか蜂の巣を連想させた。

 私も入居を検討したことがあったので、そのマンションの間取りは知っていたが、狭いうえに収納スペースがなく、一人用のビジネスホテルを思わせる作りであった。


 ある日の早朝、六時半の話である。

 くだんのマンションを、私が寝ぼけ眼で何気なく見上げると、一室の玄関が開き、スーツ姿の若い女が出てきた。

 それから、一度閉じたドアが再度開き、ぞろぞろと後続の男女が五人出てきた。

 これから会社にでも向かうのであろうか、全員、身なりが整っていた。

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