バックミラー

 夏の昼間。十年前に住んでいたアパートの近くを車で通りかかり、信号待ちをしていた時の話。

 バックミラーで何気なく、後ろに並んでいる自動車を見ると、モデルちがいではあったが、昔、私が乗っていたのと同じ車種であった。

 続けて、助手席に目を移したところ、思わず驚いた。東北で働いているはずの友人がいるではないか。

 いや、そんなはずはないと注視してみれば、それは良く似た他人で、年も十数歳は若かった。

 私は一安心したのだが、代わりにある記憶が蘇った。

 十年前、その見まちがえた友人を住んでいたアパートに泊め、いま後ろに並んでいるのと同じ車で駅まで送ったことがあった。おそらく、この道を通っただろう。

 運転席に目をやると、サングラスをかけた男がハンドルを握っていた。

 姿格好が、今の私に似ている。

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