結局のところ

 子供のとき、父親の本棚のある部屋に入れなかった。

 阿Q正伝の表紙の画が怖かったからだ。

 触ると呪われるような気がした。


 池、沼、水堀、海。

 底の見えない水辺が怖い。

 なにかに足をつかまれる気がする。

 底になにかが潜んでいる気がする。


 仏像や神像が怖い。

 木や金属から人がつくった代物にすぎないと思いながらも。


 理屈のない恐怖というのは、内側の、想像力の問題なのだろうか。

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