げっぷ

 王よ。偉大なる……最低なる王よ。私の貢物を……贈物を鯨飲し給え。冒涜王よ。私の齎した滑稽の数々を胃袋に這わせ、恍惚と眩暈の最中に陥り給え。此処に注がれた葡萄色の液体は破滅の象徴で在り、酷く醜い王様に相応しいものだ。酩酊に嘔吐を繰り返した末路、国は必ずや頽廃に狂うだろう。故に。我等が冒涜王よ。如何か私を貴方様の隣に置き給え。ああ。心配御無用。私の存在は確実に『冒涜』を熟して魅せる。傾倒する王の脳味噌だ。ドウセ。私の輪郭も嘲笑い、魂の一滴まで啜り尽くされる。上等だ。結構な事柄だと理解すべき。私は禁断の果実も忘却し、痴れた姿を民の前に晒す物体。きっと。王も私の道化所業に満足される筈だ。満足させる光や闇よりも、不満足の状態を維持する方が困難よ。落ち着きが無いのは当たり前だ。何せ――王は私を見棄てるのだ。王は私も侮蔑するのだ。王は私の心身を迷宮に投擲するのだ。歓喜の声が心臓を爆発させる。私は私の価値を見喪い、死も安寧に視得る『最後』を散らすのだ。さあ。王よ。冒涜王よ。私の願いを聴き給え。如何なる回答でも私は腹を満たせるぞ――俺の前で何を懇願したのだ。俺の前で何を望んだのだ。俺の前で何を欲したのだ。宜しい。ならば貴様の言葉を咀嚼して、相応しい物語の最期を齎そう。虚空に身を投げるが好い。勿論、其処等で発狂した、人間キャラクターとは違う末路を与えて演ろう。悦びに感謝して飛び墜ちるが最良だ。素晴らしい! 貴様は此処で俺の隣に置かれ――げっぷ。飽きたな。紛物阿呆の相手は詰まらない。虚空も吐ち切れる。

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