Θάνατος

 僕は溺死した。僕は発狂した。僕が成し遂げた事柄は罪で在り、数多の地獄を巡る『運命』に従う。羽搏く術を失った存在は堕ちるのみ。墜落した先は何なのか。不変的な物語の如く、僕の逝き先は解らない。判る気力も無い。最悪を為した蛆蟲ブホールは破滅を知れず、盲目の己を天に委ねる。神々よ。僕は君達を殺す。殺した。殺し尽くした。故に地獄は何処にも――矛盾するだと。ならば僕は何処に堕ちる。解答は底視えぬ現状に任せよう。問題なのは年数だ。問題なのは永劫だ。僕の知るべき理は何処まで続くのか。僕の得るべき正解最果は何処で留まるのか。面倒臭い。考える事を停止しよう。ヨグ=ソトホウトなど無限に有るのだ。鎖に縛られて存在諸共焼却など赦されぬ。黒い。暗い。闇。甘――可笑しい。僕は思考を取り戻したが、何処にも解答など魅中みあたらぬ。死は地獄にも楽園にも導かず、文字通りの『奈落』で終を得るのか。罰を受ける壺も無いのか。畜生。ああ。壺だったな。此処は壺だ。僕の罪は黒色インクに融ける。融けたのだ。僕が何者だったのか。漸く理解した。黒に白が浮かび、言葉が連なる。双翅目。双翅目双翅目双翅目双翅目双翅目ツェツェ――書く必要は無い。僕は溺死したのだ。溺死した筈だ。確かに死んだ。精神の破綻だ。人間の暴挙だ。復讐の絡繰り――私の手記を読むのだ。私は捕縛された罪なのだ。私は死に果てた。彼等は正しい。超自然の所業。私は底に飛び込んで――反芻する最期。僕は……待て。僕。僕なのか。私とは違うのか。僕は私だ。僕は私以外在り得……熱い。熱い。助けて! 僕の肢が縛られて在る。僕の脳味噌が! 僕の存在を返せ。返してくれ! タナトス。死。無への回帰。猟犬を放流するアフォーゴモンども。


 ――果て? 鎖て? 我等『物語』は彼の事など知らないな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る