発明品

 我等は遂に勝利への麻縄を掴んだのだ。憎き奴等を殲滅し、偉大なる王に総てを捧げるのだ。ああ。我等が国に繁栄在れ。ああ。奴等の糞溜まりに破滅在れ。既に腐った肉袋どもの詰め物だが、徹底的に叩き呑めすのが戦の醍醐味よ。優越感に浸るべきだ。苦汁を舐る続けた我等に蜜は必要不可欠。瞬間的に奪うなど慈悲の極み。無慈悲こそが最も人間的で愉悦的な報復だと思考せよ。恐怖だ。我等が創り成した兵器とは『恐怖』なのだ。数多の人間が娯楽に陥れた、一種の好奇を満たす餌。最悪を最高の舞台に堕とし込み、地獄を道化師どもの楽園と見做した。最早、我等人類に恐怖など無意味な理だったのだ。されど我等は彼等を復活させた。皆は小説を紐解くだろうか。我は読み耽った。飽きるほどに。膨らんで破裂するほどに頁を捲った。其処に答えが在ったのだ――喰らう存在。啜る怪物の腕――奔った。脳髄に閃光が奔ったのだ。夢を追い求めた我等に相応しい、現実への破壊活動よ。冷えた思考は沸騰し、憎き奴等の絶叫に目眩いた。兵器とは此れを示す言葉だったのだ。恐怖への挑戦。神々への冒涜。人類の生命への嘲笑。我は完成させたのだ。銃口を向けて糞の溜まりに怪物を放て! 奴等は酷い冷気に塗れて死んで往く! 空と成った頭を叩けば、至極綺麗な音が起きる。さあ。戦闘開始だ。同胞よ。旗を掲げて奴等の味噌を無くすのだ。奴等の知識を亡くすのだ――博士! 大いなる存在よ。御客人です――何だ。好い所で。仕方がない。ああ。発明品を盗むなよ。此処に在るのは国の為。我等の為。奴等を嗤う為のだ。貴様の身も安全だろう――誰だ。おい。誰も居ないぞ。助手……揶揄うのは止め――?




 【名:ハワード・※※※※※※・※※※※※※】

 【出身惑星:地球】

 【罪状:喰らうものどもの量産】

 【永久保管刑】

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