殺人鬼

 鬼が跳ねた。鬼が刎ねた――首が落ちた。星が墜ちた。太陽が堕ちた。世界は闇黒神ダゴンの領域に惹き頭離混まれ、不可視の深淵に融けて往った。逝くべき空間も無く。歩むべき道も無く。導く鬼の掌に、断面を触られた程度。神よ。支配者よ。如何か我等に蜘蛛の糸を。救済の光を晒し給え。白極オーロラで崩壊する世界の方が幾分か人間的だ。混沌の嘲笑を浴び、繁栄を重ねた世界の方が幾分か人間的だ。されど彼等は罵った。されど我等は囁いた。千の奴等など終って嗤え。願いは叶ったのだ。敵わない存在は鬼に屠られたのだ。故に世界は闇黒神ダゴンに塗り潰された。創造も破壊も知性に傾倒する。使者の無い神に何が為せる。死か。生か。不可能だ。此処に残ったのは『 』で在り、有無同然とも解せない。兎角。我が説くべき事柄は一よ――人間秩序・無秩序を殺す為、鬼と化すな。其処には闇黒神ダゴンが。英雄『 』が。

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