浄化街

 僕は残酷な人間だ。数多の生命が跋扈する、神の創った空間を冒涜したのだ。僕は罰を受けるべき人間だ。数多の感情が濁流する、神の造った匣を破壊したのだ。僕は苛まれるべき人間だ。数多の愛が繁栄する、神の作った楽園を堕としたのだ。僕は英雄と成った。されど誰の賞賛も受けない。されど誰の消散も受け止めない。在るのは浄化だ。文言は神の地獄量産を殺戮する。僕は狂気を赦さず、最も正しい事柄を行った。故に誰もが赦される。僕を謳う権利を与えられたのだ。けれども僕には拍手が無い。ああ。誰が僕を罵ったのか、僕にも何にも判らない。唯一解った真実は僕が『芯』を貫き通した結果だ。輝きを放出する赤よ、回転するものに愛を捧げ給え。僕は歩み始める筈よ。此処には幸など在り得ないのだから。此処には贋物など有り得ないのだから。取り敢えずは放置しよう。僕が僕で在る為に……畜生どもが! 神に従う強壮の群れ。僕の裁きを阻もうと叫ぶのか。ならば浄化を再開しよう。スッキリするまで! 僕は厄災な人間だ。現れては消滅する。僕は焼く際に貌を晒す。僕は貌。箱庭など――さあ。浄化クトゥグアするは何処だい。

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