掃除

 俺は独り、闇黒の渦巻きに取り残され、苛々の頂に到達した。理性の貌に罅が這入り、爆発寸前の脳髄がを滾らせる。此処には俺以外の普通は無いのだ。発狂するには最適な時間チクタクで在り、己の悪意ヤマンソを召喚せねば病んで終う。ええい。黙れ。叫ぶな糞の肉袋ども――斧を揮って処分するのだ。鞭を揮って嘲笑うのだ。拳を揮って蹂躙するのだ。鬼を宿すのだ――漸く静かに成った。溜息を吐きながら双眸を閉ざす。鎖された扉だ。扉の先には何が在る。光だ。解放に違いない。俺は己を抑制するべく、扉の先に光を見出したのだ。戸口に現れた怪物取り憑きでも構わない。俺には現状を殺す武器が必要不可欠だ。調理器具でも最高だ。其方が素晴らしい。俺の仕事を『終了』させる機会を得るべきか。ああ。本来ならば殺戮も赦されぬ、悪質な世話係下級の神なのだが……限界だ。抑制する薬も涸れたのだ。残ったに身を焦がし、此処に悪夢を描いて魅せよう。黙れ。黙れ。黙れ。糞尿の袋どもめ――斧を揮って断ち除ける。鞭を揮わずに斧だけを。拳を揮わず斧だけを。斧。斧。斧。肉絶ちを――綺麗だ。糞と尿は流し去られた。臓物と骨が風呂を成し、俺の胸を満たして逝く。そうだ。換気イタカを呼ばねば。扉が――俺が切断される。


 ああ。この人間も掃除係下級の神には相応しくなかった。

 屑のような種子を纏めるには何が要る。

 え? 人類には不可能な仕事だって?


 ――Nyahahahahahahahahahahahaha!!!


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