飽食者

 空腹とは食事の質を上昇させる、至極幸福な香辛料ナイアルラトホテップだ。千なる味を差別無く美に圧し上げ、既知も未知も『全』に到達させる。されど俺は飽きたのだ。下手物普通如何物クトゥルーも飽きたのだ。脳味噌に詰まった知識悪喰が怠惰に腐り果て、沸々と融ける心臓も冷えた並に堕ちて往く。俺は探求者だった。俺は探究者だった。糞が……糞も飽きた。地を濡らした汚の溜まり。塗れた己すらも無意味に死んだ。空腹最悪も慣れて滑稽デウス・エクス・マキナの領域に鎖され――故に俺は此処を歩む。虚空欲望に語る香辛料ナイアルラトホテップの奴隷よ。現実的には不要だと知るが好い。新たなる食物を掘るべきだ。新たなる美を貪るべきだ。新たなる愛を舐るべきだ。浮かんだに要は無い。浮かんだ数多に味は無い。何も無い。物語神話は啜られて っぽだ。


 ――飽食者ユッグゴトフは放棄する。

 ――創造主Lovecraft投棄制作した。

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