複数の怪奇的な物語に綴られた、超常への視認に『掠傷』を与えた描写が在る。必要な箇所を切断し、パンの大神への繋がりに至る。金属を埋め込み、人間の意識を蜘蛛糸状に発生させる。勿論、現実的に在り得ない事柄だ。発狂逸脱とは度々『愚痴』と嘲笑される結果だと思考すべき。されど私は想像するのだ。万が一、彼等の言葉は真ならば人類は酷く勿体無い生命体だと。自身の崩壊を恐れ、畏れるべき存在を拒絶し、現実の罠に甘美を覚える。可哀想に。ああ。私自身も可哀想な類に含まれる。憧れを抱いても実行不可能。言葉を吐いても肉が不動。現実も夢も己が動かず、何が変質改善するのか。凄まじく疲れた。今日も羨みながら夜に負けを認めて――脈動する世界。私は覚醒状態だ。違うな。肉を棄てた人貌。滾々と現れた炎と水は肉を成し、私の精神を呑み込んで往く。夢だ。夢だと理解可能な憧れの空間闇黒だ。故に私は鮮明な蠢きを受け入れる。可哀想な私。気の触れた真似事で脳味噌を悦ばせたいのか。本当に……呑まれた数分後――体感時間だ。実際には不明――肉の奥底で何者かが刃物を揮ってた。判断し難い。筆舌に尽くし難い何者か。人間のカタチでも、凹凸の曖昧な確固の無い……私は惹かれる。無意識に精神が向かう。緩やかに。満たされて往くのだ。其処で視たものは――ぼォっと眩む脳味噌に輝きが這入る。窓の外には白も無い。起き上がるのも面倒だが、頭が妙に軽い。楽しい。


 枕元――ズルリ。ベチョッ。

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