苦い汁を舐れ!

 ――もう。如何でも好いのだ!

 私は道路の中央で叫んだ。皆の視線が槍と成り、私の心臓を穿ち始めた。糞が。酒に酔った爺を嘲るような餓鬼ども。私が此処で何を起こすのか。シカと眼に焼き憑けるが良い。邪悪で無謀な世界に、私の憤慨の雷を降り注がせるのだ。総ては腐った果実に過ぎず、舌を狂わせる毒物で在る。故に私は拳と声を揮い、現実の悪魔を殺しに現れたのだ。さあ。遊戯の時は終いだ。始まるのは滅びの雨だと知れ。始まるのは神の大口だと知れ。涎の滴る牙に目玉を回して驚愕せよ。愉快だ。ああ。とても愉快だ。空を覆う怒りだ。おお! 私を抱擁する両腕だ。悪魔を殺戮する神の轟き――視るが好い。私の総てが落ちて繰る。繰られた世界が堕ちるのだ。素晴らしい! 神の腕が反転する! 転がる世界に。舌を出して嗤うのだ。

 ――ああ。水溜りが苦いぞ。


 ――私のイゴーロナクよ。

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